消し去れない真実、DMCA制度の悪用とストライサンド効果

「プライバシーを守ろうとした行為が、かえって注目を集めてしまう」、これはストライサンド効果と呼ばれる社会現象です。

2003年、歌手のバーブラ・ストライサンドが自分の豪邸の写真をネットから削除しようとした結果、逆にその写真が広く拡散されたことに由来します。

さて、最近海外の技術者コミュニティで話題になっている「Pollen tried to remove my article and Google is assisting with it」という出来事は、まさにこのストライサンド効果の現代版と言えるかもしれません。

イベントテック企業Pollenの経営破綻を詳細に報じた記事が、著作権侵害の虚偽申し立てによりグーグルの検索結果から削除されたのです。

今回はこの一件の背景にある技術的な仕組み、DMCAに基づく検索結果削除のプロセスとその悪用、そして情報統制が生む逆説、について、やさしく紐解いてみたいと思います。

グーグルの検索結果とDMCA削除通知

米国にはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)という法律があり、著作権者は侵害コンテンツの削除をオンラインサービスプロバイダーに要求できます。

グーグルをはじめとする検索エンジンは、このDMCAに基づく削除通知を受け取ると、多くの場合、自動化されたシステムで該当URLを検索結果から外します。

この仕組み自体は、海賊版や違法コンテンツからクリエイターを守るための大切な枠組みです。

しかし、通知の真偽を厳密に審査する仕組みは十分とは言えません。

結果として、全く根拠のない申し立てが通りやすくなっているのです。

虚偽申し立ての実態

今回のケースでは、1998年の無関係な新聞記事を「盗用元」とする主張が行われ、申立人はブーベ島という南大西洋の無人の島に住む「Ellie Piee」という人物を名乗っていました。

このあまりに不自然な申し立てにもかかわらず、グーグルは該当記事を検索結果から削除しました。

これは、システムの悪用が極めて容易であることを示しています。

削除された記事の著者は著作権者である自分以外に権利を持つ者がいないと明言し、異議申し立てを行いましたが、それでも一旦は情報へのアクセスが断たれてしまったのです。

隠そうとするほど広がる情報

ストライサンド効果が示す通り、情報を抑圧しようとする行為は、しばしば逆の結果を招きます。

Pollenの一件では、記事が削除されたことで、著者が新たに経緯を綴り、その顛末がさらに多くの技術者の目に触れることになりました。

また、元従業員による未払い賃金や年金未払いをめぐる訴訟も進行中で、問題はなおくすぶっています。

技術の進歩は、情報の流通を加速させると同時に、それを遮断しようとする動きも生み出します。

しかし、完全に消し去ることの難しさは、今回のような出来事が教えてくれる通りです。

どんなに巧妙な手段を用いても、事実はどこかで記録され、誰かが語り継ぐものなのかもしれません。

今回の一件が提起した「プラットフォームの自動処理と表現の自由」という課題は、私たちエンジニア一人ひとりが考え続けるべきテーマだと感じています。

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