人工衛星とは?数・高度・軌道と、肉眼で見る方法
地球を周回する人工衛星の数は近年急増しており、2025年時点でおよそ1.1〜1.2万基の現役衛星が軌道上に存在しています。
これは数年前の倍以上に達する規模で、スペースX社のスターリンクなど民間のメガコンステレーション(多数衛星による通信網)の打ち上げが大きく寄与しています。
用途と種類
衛星の用途別に見ると、通信衛星が圧倒的に多く、全体の6割以上(約8,000基超)を占めています。
これにはインターネット通信やテレビ放送、衛星電話などに使われる衛星が含まれます。
次に多いのが地球観測衛星(リモートセンシング衛星)で、地球の画像撮影、環境・気象監視、災害観測などを目的とするものが全体の約8〜10%(1,000基超)あります。
その他、新技術の実証を行う技術実験衛星が数百基(全体の2〜3%)、GPSなどの航法衛星(旧型測位衛星)が約100基(全体の1%前後)、宇宙望遠鏡などの科学ミッション衛星が約100基(1%程度)と続きます。
GNSS測位の数などは後述します。
なお、軍事目的の衛星も一部存在しますが、多くの通信・観測衛星は民間や公共用途と共用されており、純粋に軍事専用といえる衛星は全体の一部に留まります。
今後もインターネット通信網の拡充などに伴い衛星数はさらに増える見込みです。一方で、急増する衛星は宇宙ゴミ問題や電波干渉など新たな課題も招いており、持続的な宇宙利用の観点から各国機関が対策を検討しています。
各国の衛星測位システム(GNSS)の概要
| システム | 運用中の衛星数 |
|---|---|
| GPS(米) | 約31基 |
| GLONASS(露) | 約24基 |
| BeiDou(中) | 約44基 |
| Galileo(欧) | 約25基 |
| QZSS(日本) | 4基(将来7基) |
| IRNSS/NavIC(印) | 7基 |
| 合計 | 135基前後 |
続いて、世界の主要な衛星測位システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)について、アメリカ・ロシア・中国・EU・日本の各システムを中心にまとめます。GNSSとは、全球測位衛星システムとも呼ばれ、地球上の位置や時刻を高精度に測定するための人工衛星ネットワークです。
| システム | 衛星名 | 打ち上げ日 | 世代 / 型式 | 軌道 |
|---|---|---|---|---|
| GPS | GPS III-08 | 2025-05-XX | Block III | MEO 約20,200km |
| Galileo | FOC FM30 | 2024-09-17 | FOC | MEO 約23,200km |
| BeiDou | BeiDou-3 MEO-XX | 2023-12-XX | BeiDou-3 | MEO/GEO/IGSO |
| GLONASS | GLONASS-K2 No.XX | 2023-08-XX | K2 | MEO 約19,100km |
| QZSS | QZS-1R | 2021-10-26 | みちびきシリーズ | 準天頂軌道 |
| NavIC | IRNSS-1J | 2023-05-29 | NavIC第2世代 | GEO/IGSO |
アメリカ:GPS (Global Positioning System)
- システム概要と開発背景: GPS(全地球測位システム)は米国が開発した全球衛星測位システムで、もともと米国国防総省が1970年代から開発を進めました。
初号機は1978年に打ち上げられ、24基の衛星からなる初期コンステレーションが1995年4月に「完全運用能力」を達成しています。
冷戦期の軍事利用を端緒としますが、1990年代以降は民間にも開放され、現在では世界中で日常的に利用されています。 - 衛星数と軌道配置: GPS衛星は中軌道(MEO: Medium Earth Orbit)を周回しており、高度約20,200kmの円軌道に投入されています。
軌道傾斜角は約55度で、地球を6つの軌道平面に分けて配置され、各平面に4基ずつ計24基が基本配置となっています。
この24基で地球全域をカバーできますが、実際には予備衛星を含め常時30基前後が運用されています。
2023年時点で31基のGPS衛星が稼働中であり、予備機も含めてサービスを維持しています。各GPS衛星は約12時間で地球を1周し、任意の地点で常に4基以上が上空に見えるよう設計されています。 - 衛星の型式・特徴: GPS衛星は世代ごとにブロック (Block) と呼ばれる型式に分かれます。1990年代運用のBlock IIシリーズから改良が重ねられ、2000年代後半以降は新世代のBlock IIF(より長寿命・信号の精度向上)や、2018年以降順次打ち上げられたBlock III衛星が投入されています。
最新のGPS Block III衛星は、新しい民生用信号(L5帯や将来のL1C信号)や軍用の高耐干渉信号(Mコード)を搭載し、精度・信頼性が向上しています。
また設計寿命も15年程度と延びています。GPS全体としては米宇宙軍(旧空軍宇宙軍団)により維持・運用されており、今後もBlock III世代への更新が進められる予定です。
ロシア:GLONASS (グロナス)
- システム概要と開発背景: GLONASS(グロナス、ロシア語: Globalnaya Navigatsionnaya Sputnikovaya Sistema)はロシア(旧ソ連)が運用する全球衛星測位システムです。
ソ連時代の1976年に開発が始まり、1982年に最初の衛星が打ち上げられました。
1995年に24基の衛星配置が一応完了し一時は全球カバーを達成しましたが、90年代後半の財政難で衛星数が減少しました。
その後2000年代に入り国家優先計画として復旧が進められ、2011年10月に再び24基のフルコンステレーションが回復して世界全域でサービス提供可能となりました。
GLONASSはGPSに次いで運用された世界で2番目のGNSSであり、ロシア国内では軍民両用の戦略インフラとなっています。 - 衛星数と軌道配置: GLONASS衛星もGPS同様に中軌道(高度約19,100km)を周回します。
軌道傾斜角は約64.8度とGPSより大きく、高緯度地域(極地付近)での測位精度向上に寄与しています。
衛星は3つの軌道平面に8機ずつ配置され、完全運用状態では計24機で全球をカバーします。
ロシア全土をカバーするだけなら18機で足りる設計ですが、全球カバーには24機が必要です。
現在は常時24機が稼働するよう維持されており、2024年初め時点で26機が軌道上にあってこのうち24機が運用中となっています。
予備機を含めて安定運用が図られています。各GLONASS衛星の公転周期は約11時間16分(GPSよりわずかに短い)で、地上から見ると8日毎に同じ位置を通過するよう配置されています。 - 衛星の型式・特徴: GLONASS衛星も世代交代が行われており、初期の「GLONASS」シリーズから寿命・性能を向上させたGLONASS-M衛星(寿命7年程度)が2000年代以降主力となりました。
さらに2010年代からは新世代のGLONASS-K衛星(寿命10年以上、送信信号の改良)が投入され、2020年代には後継のGLONASS-K2の打ち上げも開始されています。
GLONASSの大きな特徴として、従来は各衛星が異なる周波数で信号を送るFDMA方式を採用していた点が挙げられます(GPSなど他システムは同一周波数で異なるコードを送るCDMA方式)。
しかし将来的には他GNSSと同様のCDMA方式の新信号も導入予定で、互換性向上が図られています。
現行のGLONASS衛星は軍用の高精度信号も提供しますが、暗号化ではなく「秘匿仕様(詳細非公表)」のコードである点も特徴です(GPSの軍用信号は高度に暗号化されています)。
中国:BeiDou (北斗)
- システム概要と開発背景: BeiDou(ベイドウ、北斗)は中国が構築した衛星測位システムです。1990年代に、中国軍が外国(米GPS)への依存を避ける戦略から独自開発を開始しました。
開発は3段階で進められ、まず試験的な「北斗1号」(BeiDou-1)システムが2000〜2003年にかけて3機の衛星で開始されました。
次に10機以上の衛星からなる地域システム「北斗2号」(BeiDou-2, コンパス)が2012年までにアジア太平洋域で運用開始し、最終段階として全球システム「北斗3号」(BeiDou-3)が2020年までに完成しています。
2020年6月に55機目のBeiDou衛星が打ち上げられ、これをもって全球測位網が正式に完成したと宣言されました。
BeiDouという名称は北斗七星に由来し、中国はGPSやGLONASSに対抗しうる自前のGNSSを持つに至りました。 - 衛星数と軌道配置: BeiDouシステムは他国のGNSSと異なり、複数の軌道種類の衛星で構成される点が特徴です。
全球版のBeiDou-3は中軌道衛星 (MEO)・静止衛星 (GEO)・傾斜静止軌道衛星 (IGSO)を組み合わせた計30機(名目構成)からなります。
具体的には高度約21,500kmのMEO軌道に24機、赤道上空約3.6万kmの静止軌道に3機、軌道傾斜角55度の傾斜地球同期軌道(24時間周期)に3機を配置し、これらで全球をカバーします。
各衛星間でのリンク機能も備え、効率的な運用が可能です。
加えて、旧世代のBeiDou-2から引き続き運用中の衛星もあり、2023年末時点で中国は合計44機(GEO:7機、IGSO:10機、MEO:27機)の測位衛星を運用中と報告されています。
このうち約30機が最新世代のBeiDou-3衛星で、残りはBeiDou-2世代の衛星が補完的に使われています。 - 衛星の型式・特徴: BeiDou衛星も世代によって性能が強化されています。
初期のBeiDou-1は3機のみで中国国内限定の実験サービスでした。
BeiDou-2(コンパス)では衛星数を増やし5機のGEOと5機のIGSO、4機のMEOでアジア太平洋をカバーしました。
最新のBeiDou-3衛星では原子時計の高精度化や、衛星間通信リンク、新周波数でのオープンサービス提供、高精度(センチメートル級)補強サービスなどが実現しています。
またGPSやGalileoとの互換性も考慮し、一部の周波数帯や信号フォーマットは他GNSSと共通化されています。
中国は将来のさらなる精度向上に向け、地上補強システムや拡張構想にも取り組んでおり、BeiDouシステムは中国のみならず周辺国やBelt and Road参加国への展開も図られています。
ヨーロッパ連合:Galileo (ガリレオ)
- システム概要と開発背景: Galileo(ガリレオ)は欧州連合(EU)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で構築した衛星測位システムです。
世界で初めて民間主導で運用されるGNSSとして企画され、米露の軍事主導のGNSSに対する独立性確保と商業利用促進を目的に2000年代初頭から開発が始まりました。
2005年に試験衛星GIOVE-Aを打ち上げて周波数枠を確保し、2011年に最初の運用機が軌道投入されました。
その後段階的に衛星を増やし、2016年末に初期サービスが開始されています(欧州測位サービスセンターによる「初期運用」宣言)。
ガリレオは多国間協力プロジェクトとして進められ、本部はチェコ・プラハに置かれています。 - 衛星数と軌道配置: Galileoの衛星は、GPS同様に高度約23,200kmの中軌道(MEO)を周回し、軌道傾斜角は約56度に設定されています。
軌道は3つの平面に配置され、満足なサービス提供には24機の運用衛星が必要となります(27機稼働+3機予備の計30機体制を目標)。
2020年代前半までに次々と衛星が打ち上げられ、2024年9月時点で25機が運用中と報告されています。
2024年にはスペースXのロケットによりGalileo衛星29号機・30号機が打ち上げられ、軌道上でテストの後2024年8月にサービスに投入されました。
これにより3平面のうち2平面が所定数で完全充足し、残る1平面も含めコンステレーション完成が目前となっています。
Galileoは最終的に予備衛星を含む30機体制で全世界で測位・時刻サービスを提供する計画です。 - 衛星の型式・特徴: Galileo衛星は一世代の衛星ユニット(FOC: 完全運用能力段階衛星)でほぼ統一されています。
初期に4機の検証衛星(IOV)を打ち上げた後、OHBシステム社などが製造した実用衛星を2014年以降継続的に投入しました。
各衛星は高精度な水素メーザー原子時計等を搭載し、GPSより一桁高い精度を目指しています。
またGalileoは民生向けのオープンサービスの他に、認証付き商用サービスや捜索救難(SAR)サービス、公共規模向け高信頼サービス(PRS)など多彩なサービスを提供する点も特徴です。
管理運用はEU宇宙プログラム機関(EUSPA)が担い、ESAは技術開発を担当しています。将来計画としては第2世代衛星の開発が進められており、2026年以降に新型衛星の打ち上げが予定されています。
日本:準天頂衛星システム (QZSS、「みちびき」)
- システム概要と開発背景: 日本の準天頂衛星システム(QZSS: Quasi-Zenith Satellite System、「みちびき」)は、GPS信号を日本国内で増強し精度向上させる目的で計画・整備された地域型測位システムです。
2002年に概念検討が始まり、2010年に初号機「みちびき1号(QZS-1)」が打ち上げられました。
当初3機体制を想定していましたが、その後4機体制に拡充され、2017年までに4機の衛星(みちびき1号〜4号)を投入し2018年11月に正式サービスを開始しました。
QZSSはGPS衛星からの信号を補強するサブシステム的性格が強いですが、日本独自の測位インフラとして災害時のバックアップや、高精度測位(センチメータ級:日本版GPS補強サービス「MICHIBIKIセンチメータ級定位補強サービス」など)の提供にも寄与しています。 - 衛星数と軌道配置: 準天頂衛星は日本付近の天頂付近に長時間留まるよう設計された特殊な軌道を採用しています。
3機の衛星がそれぞれ「準天頂軌道」と呼ばれる高楕円の傾斜地球同期軌道に投入され、軌道周期はちょうど24時間ですが軌道傾斜角を約43°付けることで地上から見ると8の字を描きながら日本上空に長時間滞在します。
この3機を120°ずつ軌道経度をずらして配置することで、常時1機が日本の天頂付近に現れるようになっています。
加えて、もう1機が静止軌道(GEO)に配置され、日本上空(経度127°E付近)に常時とどまって広域補強信号を送っています。
現在運用中の4機(QZS-1R,2,3,4)はこの3準天頂+1静止の構成です。さらに日本政府は独立測位を可能とする7機体制への拡張を決定しており、2023〜2024年に追加3機(QZS-5〜7号)の打ち上げ。
7機体制では準天頂軌道衛星4機、静止軌道衛星2機、そして1機は準同期(擬似静止)軌道といって静止軌道に近い軌道傾斜角を持つ衛星になる計画です。
これにより一層のサービス安定性と、日本のみで完結する測位サービスの提供が可能となります。
最新の情報
QZS‑6 が2025年2月2日に打ち上げられ、2月中に静止軌道に入りました。
また、2025年7月18日より、衛星測位サービス、高精度補強、SBAS、信号認証などの新サービスが順次提供開始されています。
日本政府は「GPSに依存しない日本単独の測位が可能な7機体制」構築を目標としており、QZS‑5とQZS‑7の打ち上げを含めて2025年度中に7機体制を実現する計画で、将来的には11機体制も視野に入れています。
- 衛星の型式・特徴: QZSSの衛星は「みちびき」の愛称で呼ばれ、現在運用中の2〜4号機および予備機の1R号はいずれも三菱電機が製造した同型機です。
各衛星はL帯のGPS互換信号に加え、誤差補正情報やテキストメッセージを送信できるトランスポンダ(災害時の「通報メッセージサービス」など)も搭載しています。初号機(QZS-1)は設計寿命を超え2023年に退役しましたが、後継のQZS-1Rが2021年に打ち上げられ引き継いでいます。
今後投入される予定のQZS-5〜7号機では、一部が静止衛星となるほか、中軌道からの測位補完用として日本版GPSとも言える独自周波数での測位信号提供も検討されています。
QZSSはあくまで地域システムであり単独では全球測位はできませんが、GPS等と併用することで都市部のビル陰対策や測位精度・信頼性向上に大きく貢献しています。
災害情報
受信機を持っていればみちびきから災害情報などを受信できます。
古野電気:QZ‑DC1などで検索してみてください。
| 利用形態 | 機器(受信機・モジュール) | アンテナ | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 通信不要で防災情報を受信 | 古野電気 QZ‑DC1 | 通常GNSSアンテナで可 | 直接衛星からの受信、全国対応 |
| 自作・試作品系 | ソニー SPRESENSE + GNSSアドオン | 通常GNSSアンテナも可 | QZQSM信号のデコードまで簡単に可 |
| プロ仕様・多機能 | u‑blox ZED‑F9P / MAX‑M10S など | 通常LNSSアンテナ対応 | L1S含む複数周波の受信可能 |
| 受信安定重視 | L1S対応GNSSアンテナ | 明記された専用アンテナ | 高感度・安定性重視に適 |
衛星インターネット通信サービス
スペースXが最も知名度があるのはわかりますが、当然世界各地で類似のサービスは展開しています。
-
Eutelsat –
OneWeb
低軌道(LEO)648機規模のネットワーク。高緯度地域や政府・企業向けに強み。 -
Amazon –
Project Kuiper
FCC規制に基づき1,600基以上を投入予定。最終計画は3,200基規模。 -
Telesat –
Lightspeed
カナダ発の低遅延衛星ネットワーク。2026年以降商用化予定。 -
SES –
O3b mPOWER
中軌道(MEO)による広帯域サービス。2024年商用開始。 -
Viasat
静止衛星(GEO)ベースの老舗プロバイダー。ViaSat-3で世界カバー強化。 -
HughesNet
米国市場で強み。Jupiter 3衛星により最大110 Mbpsを提供。 -
Globalstar / Iridium / Orbcomm
衛星電話やIoT向け通信網。インターネット専用ではないが通信基盤として重要。 -
Lynk Global
既存のスマホを衛星と直接接続するD2D通信を開発中。 -
AST SpaceMobile
スマホ直結の衛星セルラーネットワーク。Vodafoneなどと提携。 -
中国国家プロジェクト –
G60(Qianfan)/ Guowang
数千〜1万機規模の大規模ネットワーク構想。一部は既に打ち上げ開始。
衛星を駆使することで、地上でのプロバイダや中央集権企業への依存を少なくしていくことが可能になります。
また、GPSプログラムなどを使えば移動、農業含め様々な技術を個人レベルで所有することができるため、これからの世界できっと役に立つことでしょう。
## 人工衛星とは何か 人工衛星は、地球のまわりを回り続けるように打ち上げられた機械のことです。月のように自然に回っているものを衛星と呼ぶのに対して、人が作って回らせたので人工衛星といいます。 よく聞かれるのが、なぜ落ちてこないのか、という点です。答えは、落ち続けているからです。 物を横向きに投げると、放物線を描いて地面に落ちます。速く投げるほど遠くまで飛びます。ここで、地球が丸いことを思い出してください。十分に速く投げると、落ちていく曲がり方と地面が丸く逃げていく曲がり方が釣り合い、いつまでも地面に届きません。この状態が周回です。 必要な速さは高度で変わります。高度400キロメートルあたりなら毎秒約7.7キロメートル、時速にすると約2万8千キロメートルです。この速さなら、地球を一周するのに約90分しかかかりません。 ## 高度と軌道の種類 人工衛星は高度によって役割が分かれます。高いほど広い範囲を見渡せますが、往復に時間がかかり、打ち上げにも費用がかかります。 | 呼び名 | 高度のめやす | 一周の時間 | 主な用途 | |---|---|---|---| | 低軌道 | 200から2,000キロメートル | 90分から2時間 | 地球観測、宇宙ステーション、衛星インターネット | | 中軌道 | 2,000から36,000キロメートル | 数時間から半日 | 測位(GPSなど) | | 静止軌道 | 約35,786キロメートル | 24時間 | 気象、放送、通信 | 静止軌道の高さには理由があります。この高度だと一周にちょうど24時間かかり、地球の自転と同じ速さで回ります。地上から見ると空の一点に止まって見えるので、アンテナを向けたまま固定できます。放送用のパラボラアンテナが動かないのはこのためです。 測位衛星が中軌道にいるのも理由があります。低すぎると一度に見える範囲が狭く、常に4基以上を見るために膨大な数が要ります。高すぎると信号が弱くなり、位置を測る精度が落ちます。GPSの高度は約20,200キロメートルで、一周に約12時間かかります。 ## 肉眼で見る 人工衛星は望遠鏡がなくても見えます。ただし、衛星そのものが光っているわけではありません。太陽の光を反射して光って見えるだけです。 このため、見える条件が決まっています。 観測する場所は暗く、衛星のいる高いところにはまだ太陽が当たっている、という時間帯です。具体的には日没後1時間半ほどと、日の出前1時間半ほどです。真夜中は、衛星も地球の影に入ってしまうので見えません。 見え方は、飛行機とよく間違えられます。見分け方は光り方です。飛行機は赤や緑の光が点滅します。人工衛星は点滅せず、一定の明るさの点が、ゆっくりと、しかし一定の速さで空を横切ります。数分で地平線から地平線へ渡り、多くの場合は途中で急に消えます。地球の影に入ったからです。 方角は、多くの衛星が西から東へ動きます。地球の自転と同じ向きに打ち上げるほうが燃料が少なくて済むためです。極を通る軌道の衛星は北から南、または南から北へ動きます。 ## 宇宙ステーション「きぼう」を見る 肉眼で見える人工の物体のうち、いちばん明るいのが国際宇宙ステーションです。日本の実験棟の名前から「きぼう」と呼ばれることもあります。 大きさはサッカー場ほどあり、条件がよければ金星に近い明るさで見えます。街中でも見えるほどです。 いつ、どの方角に見えるかは日によって変わります。宇宙航空研究開発機構が「きぼうを見よう」という予報のページを出しており、地域を選ぶと、日付、時刻、方角、見える高さの角度が表示されます。アメリカ航空宇宙局も同様の通知を出しています。 予報を見るときの読み方を覚えておくと役立ちます。仰角は地平線からの角度で、90度が真上です。この数字が10度や20度だと、建物や山に隠れて実際には見えないことが多くなります。40度を超える回を狙うと、失敗が減ります。 ## スターリンクの列 近年よく話題になるのが、いくつもの光の点が一列に連なって流れていく光景です。これは打ち上げ直後の衛星インターネットの衛星が、まだ散らばりきらずに固まって飛んでいる状態です。 打ち上げから数日のうちは列に見え、その後それぞれが軌道を上げて散っていくため、しばらくすると個別の点になります。この光景を見たいなら、打ち上げの直後を狙うことになります。 天文の観測にとっては悩みの種でもあります。長い時間をかけて撮影した星の写真に、白い線がいくつも走ってしまうためです。反射を抑える処理を施した衛星も打ち上げられていますが、数が増える速さのほうが上回っています。 ## 今どこを飛んでいるかを見る 衛星の位置は、公開されている軌道の要素から計算できます。これを地図の上に描いてくれるサービスがいくつもあり、ブラウザで開くだけで、いま頭上を何が通っているかが分かります。 仕組みは意外に単純です。各衛星について、ある時刻での位置と速度を表す数値の組が公開されており、そこから運動の式で先の位置を計算します。この数値は数日ごとに更新されます。古い数値のまま計算すると、時間がたつほどずれていきます。 自分で計算したい場合は、この数値を読み込んで軌道を求める部品が各言語にそろっています。位置が求まれば、あとは自分の緯度経度からの方角と仰角に直すだけです。GPSの受信機が出す位置と組み合わせれば、いま自分の真上に何がいるかを表示する道具が作れます。 ## 気象衛星ひまわり 日本で最もなじみのある人工衛星が、天気予報で使われている気象衛星です。静止軌道にいるので、いつも同じ範囲を見続けられます。 観測した画像は10分ごとに更新され、災害が起きているときは特定の範囲を2分半ごとに撮ることもできます。台風の渦が動いていく映像は、この連続撮影をつなげたものです。 画像は気象庁と情報通信研究機構が公開しており、誰でも見られます。可視光の画像は昼しか写らないため、夜は赤外線の画像に切り替わります。天気予報の雲の映像が夜になると白黒の質感に変わるのは、このためです。 ## 寿命と、その後 人工衛星は永久には使えません。姿勢や高度を保つための燃料が尽きると、役目を終えます。低軌道の衛星の寿命は5年から10年ほど、静止軌道のものは15年ほどが目安です。 低軌道の衛星は、放っておいても数年で落ちてきます。高度が低いところには空気がわずかに残っており、少しずつ減速するためです。大半は大気圏で燃え尽きます。 静止軌道の衛星は落ちてきません。そこで、燃料が残っているうちに少し高い軌道へ移し、他の衛星の邪魔にならない場所へ退かせます。この場所を墓場軌道と呼びます。 使われなくなった衛星や、打ち上げに使ったロケットの破片は、宇宙のごみとして残ります。秒速数キロメートルで飛んでいるため、小さな破片でも衝突すれば大きな損傷になります。宇宙ステーションが軌道を上げて避ける操作を行うのは、これを防ぐためです。 ## 英語での呼び方 海外の資料を読むときのために、対応する語を並べておきます。 | 日本語 | 英語 | |---|---| | 人工衛星 | artificial satellite / satellite | | 軌道 | orbit | | 低軌道 | low Earth orbit (LEO) | | 静止軌道 | geostationary orbit (GEO) | | 測位衛星 | navigation satellite | | 気象衛星 | weather satellite | | 宇宙ごみ | space debris | | 打ち上げ | launch | | 周回する | orbit (動詞) |