無料で使えるGNSSの道具を公開しています|KUON GEO でできること

位置を扱っていると、同じところで手が止まります。

近くに使える基準局があるのか分からない。受信機から出てきた生のログを、解析ソフトが読める形に直したい。いま頭の上に何が飛んでいるのか見たい。ここでドローンを飛ばすのに申請が要るのか調べたい。

こうした作業のために、KUON GEO というものを作って公開しています。アカウントは要らず、費用もかからず、ブラウザだけで動きます。この記事では、いま何ができるのかを一つずつ紹介します。

何のために作っているか

測位と気象のデータを、加工せずに残しておくための基盤です。

位置に関わるデータは、その瞬間に取らなければ二度と手に入りません。基準局が生きていたかどうか、そのとき空に何機見えていたか、雨がどう降っていたか。過ぎてしまえば、誰も答えられなくなります。

だから、集めて、原本のまま残しています。加工した結果は別の層に置き、元のデータは書き換えません。

KUON GEO のデータと方法論のページ。測定された事実のみを公開する、原本は無加工で保持する、取得時に自己検証する、来歴を刻む、三層で守る、という5つの原則が並んでいる

姿勢としては、地図の分野で言えば Organic Maps に近いところにいます。アカウントを作らせず、広告を出さず、利用者を追いません。公開するのは測ったものだけで、それらしく見えるだけの値を混ぜることはしません。

RTK基準局の稼働を記録する

いちばん手のかかっていることが、これです。

世界中で公開されているRTKの基準局を、10分ごとに巡回しています。各キャスターに「いまどの局が生きているか」を尋ね、その答えを残す。それだけの作業を、止めずに続けています。

RTK基準局の一覧。日本418局、稼働中399局、稼働記録46日、延べ死活確認回数14,662,195回といった数字が並び、下に局ごとの一覧表が続いている

いま日本国内で418局、世界で2,000局を超える数を見ています。延べの確認回数は1,400万回を超えています。

なぜこんなことをしているかというと、この記録を残している人が他にいないからです。取り逃した10分は、二度と観測できません。

一覧では、局ごとに位置、配信の形式、認証が要るかどうか、無料か有料か、そして直近30日の稼働実績が見られます。近くに使える局があるかを探すとき、また、いま使っている局が落ちているのか自分の設定が悪いのかを切り分けるときに使えます。

装置が自分で読める形の一覧としても配っています。受信機の側で距離を測って、いちばん近い生きている局につなぐ、という使い方ができます。

なお、補正データそのもの(RTCM)は保管していません。稼働の記録だけを残しています。

一覧はRTK基準局の一覧にあります。

地図の上でまとめて見る

同じ情報を、地図の上で見られるようにしたものが KUON MAP です。

KUON MAP の画面。基準局が地図上に点で示され、それぞれに到達圏の円が重なっている。左側に検索欄とレイヤーの切り替えが並ぶ

基準局が緑と赤で生死を示し、そのまわりに10キロメートルと20キロメートルの円が重なります。この円が、センチメートルの精度が出る範囲と、実用になる範囲の目安です。自分の現場がどの円に入っているかが、一目で分かります。

雨雲、気温、気圧、風の流れも同じ地図に載ります。衛星の軌道も重ねられます。

道具としても使えます。RTKのログを読み込んで1画素1センチメートルの縮尺で描くこと、2地点の間を測ること、座標を変換すること、磁気の偏角を調べることが、この一枚の中でできます。

地図はKUON MAPから開けます。

いま飛んでいる衛星を見る

3次元の地球儀の上で、衛星を実時間で追えます。

KUON ORBIT の画面。3次元の地球のまわりに衛星が色分けされた点で表示され、左側にGNSS衛星、ISS、Starlink、太陽系といったレイヤーの切り替えが並ぶ

測位衛星は系統ごとに色が分かれています。GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、そして日本のみちびきです。宇宙ステーションも、衛星インターネットの群れも表示できます。全部を出すと約1万1千機になります。

衛星を押すと、識別の番号、高度、速度、周期が出ます。白い線は、これから1周するあいだにたどる道筋です。

みちびきを表示すると、軌道が8の字を描くのが見えます。日本の真上に長くとどまるように組まれた軌道が、そのまま形になって現れます。文章で読むより、動くものを見たほうが早いと思います。

時間を早送りする機能があるので、1周ぶんの動きを数十秒で追えます。

KUON ORBIT から開けます。

GNSSのデータを変換する

受信機から出てきたファイルが、使いたいソフトで開けない。位置を扱っていると、必ずこの場面に来ます。

そのための道具を並べています。すべてブラウザの中で動き、登録は要りません。

KUON Tools の一覧。RINEX Converter、RINEX Viewer、GNSS Track Converter、RINEX Hatanaka、RINEX QC、KUON MAP、RTK Stations、KUON ORBIT の8つが並んでいる

RINEXへの変換は、受信機の生のログを解析用の形式に直します。u-bloxの.ubx、RTCM3、SBFに対応しています。

RINEXビューアは、観測のファイルを開いて、どの衛星がいつ見えていたか、電波の強さがどうだったかを時系列で表示します。位置が飛んだ原因を探すときに、これが手がかりになります。

品質のチェックは、エポックの数、欠測の割合、衛星系統ごとの観測数を自動で出します。

Hatanaka圧縮の展開にも対応しています。国土地理院や国際的な機関が配っている観測データは、この形式で圧縮されていることが多く、そのままでは開けません。

軌跡の変換は、NMEA、.ubx、GPX、KML、GeoJSON、CSVを相互に直します。GPSロガーの記録を地図ソフトに渡したいとき、この一手間で済みます。

道具の一覧はKUON Toolsにあります。

ドローンの飛行を判定する

日本国内で、その地点の飛行に航空法上の許可や承認が要るかどうかを、地図をタップして確かめられます。

人口が集中している地区、空港の制限表面、飛行が禁止されている対象を判定します。

ひとつ、はっきり書いておきます。何も表示されないことは、規制がないことを意味しません。飛び方の条件、各地の条例、私有地の扱いは別にあります。最終の可否は、必ず公式の窓口で確認してください。この道具は、現場に着いてから気づくことを減らすためのものです。

ドローン飛行の要否判定から使えます。

用語を調べる

RTK、GNSS、NTRIP、RINEX。この分野は、略語を知らないと最初の一歩が踏み出せません。

専門用語を使わずに書いた説明を置いています。読んだあとで、そのまま道具や地図に進んで手を動かせるようにしてあります。

  • RTKとは 普通のGPSが数メートルずれるのに、なぜセンチメートルで測れるのか
  • GNSSとGPSの違い GPSはひとつのシステムの名前、GNSSは総称
  • NTRIPとは 基準局の補正をインターネットで受け取る仕組み
  • RINEXとは 生の観測を扱うための標準の形式

そのほかにあるもの

日本の地図のレイヤー、CADの図面を扱う道具、そして火星と月の地図も置いてあります。

火星の地図は、探査機が撮った画像をつないだものです。月には、これまでの着陸地点が載っています。測位の話とは直接つながりませんが、位置を残すという一点では同じことをしています。

使い方の制限について

登録は要りません。広告は出しません。利用者を追う仕組みも入れていません。

そのうえで、無理のない範囲で使ってください。基準局の巡回も、道具の変換も、こちらの計算機の上で動いています。

道具に上げたファイルは、処理が終われば消えます。変換の結果だけを持ち帰ってください。

まとめ

KUON GEO でいまできることを並べています。

基準局の稼働を10分ごとに記録すること。それを地図の上で到達圏つきに見ること。衛星を実時間で追うこと。受信機の生のログを解析できる形に直すこと。ドローンの飛行に許可が要るかを調べること。

どれも、自分が位置を扱っていて必要になったものです。作ってみたら他の人にも要るだろうと思ったので、そのまま公開しています。

入口はKUON GEOです。

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