RTK基地局の選び方|無料の公開局・有料サービス・自作

RTKでセンチメートルの精度を出すには、補正情報が要ります。この補正情報を作って配っているのが基準局です。

自分で建てるか、誰かのものを使うか。使うなら無料か有料か。この選択で、費用も安定度も変わります。この記事では、日本で実際に選べる道を並べて、それぞれの向き不向きを整理します。

RTKそのものの仕組みについては、別の記事に書きました。

補正情報を手に入れる4つの道

費用 通信回線 向いている場面
公開されている無料の基準局 0円 必要 試す、趣味、研究
有料の配信サービス 月額数千円から数万円 必要 業務、止まっては困る用途
みちびきからの放送 0円(対応受信機が要る) 不要 山間部、通信の届かない場所
自分で基準局を建てる 機材一式 場合による 近くに使える局が無い場所

順に説明します。

公開されている無料の基準局

大学の研究室、測量を仕事にしている人、機材を持っている個人が、自分の基準局を誰でも使える形で公開しています。これを善意の基準局と呼びます。

日本には、こうした局を一覧にした掲示板があります。都道府県から近い局を探し、接続に必要な情報を受け取って、自分の受信機に設定します。「善意の基準局」で検索すると見つかります。

世界規模のものでは、rtk2go.com というサービスがあります。誰でも自分の基準局を登録して公開でき、誰でも使えます。ホスト名は rtk2go.com、ポートは2101です。マウントポイントと呼ばれる局の識別名を一覧から選び、利用者名は空欄か anonymous を入れます。

無料の局を使うときに知っておくことがあります。

止まることがあります。個人の善意で動いているので、機材の故障、回線の切り替え、引っ越しで、予告なく配信が終わります。業務の途中で止まると困る用途には向きません。

品質にばらつきがあります。設置場所の空の広さ、アンテナの質、位置の決め方が局ごとに違います。同じ距離でも、局を変えると固定解の出やすさが変わることがあります。

自分の位置を送ることになります。多くのサービスは、利用者の受信機から現在位置を送り、それに応じて最適な局を選ぶ仕組みです。位置を知られたくない場面では、この点を意識してください。

礼儀があります。誰かが自腹で建てて回線代を払っています。試すだけつないで放置する、必要以上に長時間つなぎ続ける、といった使い方は避けてください。

有料の配信サービス

止まっては困る用途には、有料のサービスがあります。

国土地理院が全国に千点あまりの電子基準点を運用しており、その観測データが多くの民間サービスの土台になっています。各社はこのデータを使い、利用者のいる場所のすぐそばに仮想の基準局があるかのように補正情報を作って配信します。基準局が遠くても精度が落ちにくいのは、この方式のおかげです。

料金は、個人や小規模の利用を想定した月額数千円のものから、測量や建設の業務向けで月額数万円のものまで幅があります。通信用の回線がついてくる契約もあります。金額と条件は変わるので、契約の前に各社の案内を確認してください。

無料との違いは、金額よりも約束にあります。稼働率が保証されている、止まったときに問い合わせ先がある、全国どこでも同じ精度が出る、という点に費用を払う形です。

みちびきからの放送

日本には、通信回線を使わずに補正情報を受け取る道があります。準天頂衛星みちびきが、補正情報そのものを電波で放送しているためです。

この方式には、はっきりした利点があります。携帯電話の電波が届かない山の中や海の上でも使えること、利用の登録も月額の費用も要らないこと、そして利用者が増えても混まないことです。

条件は、この放送に対応した受信機が必要なこと、そして空にみちびきが見えている必要があることです。ビルの陰や樹木の下では放送そのものを受け取れません。

収束までの時間は、地上から補正を受け取る方式より長くかかります。始めてから精度が出るまで、数十秒から数分待つことになります。

自分で基準局を建てる

近くに使える局が無い場所では、自分で建てることになります。畑の中、山の中、離島などです。

必要なものは3つです。

受信機とアンテナがもう一組。移動局と同じものでかまいません。アンテナは空が広く見える場所に、動かないよう固定します。

基準局自身の正確な位置。ここが肝心です。基準局の位置が10メートルずれていれば、移動局の位置も同じだけずれます。値は正しく見えるので、間違いに気づけません。位置を決める方法は2つあります。長時間の観測を平均して自分で求める方法と、既知の点を使って測る方法です。前者は受信機の機能として用意されていることが多く、数時間から一日置いて平均を取ります。

配る仕組み。同じ場所で使うなら、無線で移動局へ直接飛ばせます。離れた場所から使いたい、または複数人で使いたいなら、インターネットへ流します。小型のコンピュータを1台つないで、補正情報を配信する役目をさせる形が一般的です。

自作で気をつけるのは、位置の決め方と、アンテナの固定です。この2つが甘いと、移動局の側でいくら固定解が出ても、絶対的な位置は信用できません。相対的な位置だけが必要な用途、たとえば同じ畑の中で去年と同じ場所を出したいという用途なら、それでも実用になります。

どう選ぶか

まず試すなら、無料の公開局です。費用がかからず、設定の練習にもなります。近くに局があるかどうかを、掲示板で先に確かめてください。

通信の届かない場所で使うなら、みちびきからの放送に対応した受信機を選びます。回線契約が要らないので、走り回る用途と相性がよくなります。

仕事で使う、止まると損害が出るなら、有料のサービスです。金額は保険と考えるほうが実態に近くなります。

どこにも局が無い場所で、繰り返し同じ場所を測るなら、自分で建てます。手間はかかりますが、一度建てれば費用は回線代だけです。

固定解が出ないときの切り分け

基準局まわりで起きる問題は、次の順で調べると早く見つかります。

補正情報が届いているかを、まず受信機の画面かログで確認します。受信量が0のままなら、接続の設定か回線の問題です。

届いているのに固定解にならないなら、基準局までの距離を疑います。おおよそ20キロメートルを超えると苦しくなり、50キロメートルを超えると出にくくなります。

距離が近いのに出ないなら、空の見え方です。移動局の側で衛星が足りていない可能性が高くなります。開けた場所で試し直してください。

それでも出ないなら、局を変えてみます。相手側の機材の不調や、位置の設定の誤りということがあります。無料の局では珍しくありません。

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