【徹底解説】今さら聞けない旧約聖書のすべて〜アブラハムの物語

西洋の歴史は旧約聖書を軸に動いているのに、日本の学校では旧約聖書の勉強がないばかりか、神道の教育も受けられない始末です。

実は宗教学を学ぶと世界がより一層俯瞰してみることができますし、考察する力が身につきます。

旧約聖書の序盤〜創世記〜バベルの塔まではこちらの記事から。

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【旧約聖書の書き換え】執筆と編集の歴史

アブラハムの物語〜(超重要)

この記事ではエピソード編ということで、アブラハムの物語から進めていきます。

まずは、アブラハムとは誰か?というところから入らなければいけません。

アブラハム(元の名前はアブラム)は、旧約聖書においてかなり重要な人物であります。

何が重要であるか?といいますと、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の祖先となっている点です。

彼は信仰と従順の模範として今日でも称えられ、多くの宗教的な教えにおいて中心的な役割を果たしています。

出生と家系

アブラハムはメソポタミア地方のウルで生まれました。

彼はテラの息子であり、兄弟にはナホルとハランがいます。

彼の家族は偶像崇拝を行っていましたが、アブラハムは唯一の神への信仰を持つ人物として選ばれました。

「テラは70歳でアブラム、ナホル、ハランをもうけた。ハランはロトの父であった。テラはその一族と共にウルを出てカナンの地へ向かったが、ハランに留まり、そこで亡くなった。」

創世記11:26-32

ちなみに計算してみると、ノアの洪水からテラが誕生するまでの期間は約292年、アブラハムが誕生するまでの期間は約362年です。

世代 名前 次世代誕生時の年齢 合計年数
1 ノア 600歳(洪水時の年齢) 0年(起点)
2 セム 100歳(洪水後2年) 2年
3 アルパクシャデ 35歳 37年
4 シェラ 30歳 67年
5 エベル 34歳 101年
6 ペレグ 30歳 131年
7 レウ 32歳 163年
8 セログ 30歳 193年
9 ナホル 29歳 222年
10 テラ 70歳 292年
11 アブラム(アブラハム) 362年(テラが70歳の時にアブラムが誕生)

アブラハムの物語は、神が彼に特別な召命を与える場面から始まります。

神はアブラハムに言いました。

神の声: 「アブラムよ、あなたの国を出て、あなたの親族や父の家を離れ、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。」(聖書の記述(創世記12:1-3

この声が聞こえたのが、アブラム75歳の時。

アブラハムは神の命令に従い、妻サライと甥ロトを連れてカナンの地へと旅立ちました。

彼の信仰と従順は、この旅の始まりを象徴しています。

カナンの地に到着したアブラムとロト。

しかし、彼らの家畜が増え、土地の不足から争いが起こりました。

アブラムはロトに言いました。

「ロトよ、私たちの間に争いがあってはならない。全地はあなたの前に広がっているではないか。あなたが左を選べば、私は右に行き、あなたが右を選べば、私は左に行こう。」

ロトはヨルダンの平野を選び、ソドムとゴモラの近くに住むことにしました。

アブラムはカナンの地に残り、神の約束を待ちました。

ある日、アブラムは神に疑問を投げかけます。

「主よ、あなたが私に与える報いは何ですか?私には子供がありません。」

神の声: 「アブラムよ、恐れるな。わたしはあなたの盾であり、あなたの報いは非常に大きい。あなたの子孫は星のように数多くなる。」

神はアブラムに動物のいけにえを捧げさせ、契約を結びました。神は彼に、子孫がエジプトで奴隷となるが、後に大いなる財産と共に帰ってくると予告しました。

サライ(アブラハムの妻)は子供がいない、できないことを心配し、女奴隷ハガルをアブラムに与えます。

サライはアブラハムが星のような子孫に恵まれると言う神の言葉を信じることができなかったわけです。

ハガルはのちにイシュマエル(アブラハムが86歳のころ)を産みましたが、これが家庭内の緊張を引き起こしました。

サライの声: 「ハガルが私を軽んじている!アブラム、どうかこの問題を解決して!」

アブラムの声: 「サライよ、ハガルはあなたの手の中にある。彼女をどうするかはあなたに任せる。」

その後、神の約束により、アブラムとサライに息子イサクが生まれます。

イサクの誕生は神の約束の成就を象徴しています。

しかし、神はアブラハムの信仰を試すために、イサクを犠牲に捧げるよう命じました。

神の声: 「アブラハムよ、あなたの愛する一人子イサクを連れてモリヤの地に行きなさい。そして、彼をわたしに捧げなさい。」

アブラハムは従い、イサクを捧げようとしましたが、神はその行為を止め、アブラハムの信仰を称賛しました。

神の声: 「アブラハムよ、わたしはあなたの信仰を見て、あなたを祝福する。あなたの子孫は天の星のように、海辺の砂のように多くなるであろう。」

なぜ神は人を試したのか?

アブラハムの物語は信仰と従順、そして神との契約の力を示しています。

彼の生涯は、後世の信仰の基盤となり、多くの人々に希望と教訓を与え続けています。

しかし、疑問に思いませんか?

全知全能の神がなぜ人の信仰心を試すのか?

ユダヤ教のラビたちも非常に考えましたが、一人のラビは、試練の先に信仰があるという見解がありました。

たとえ息子を捧げろと言う大変な試練があったとしても信仰が確立され、神の命に従う信仰心があれば、神の約束は守られると言うエピソードになっています。

ちなみにアブラハムは175歳まで生きました。

この長寿は、彼が神に従い、神との契約を守り続けたことによる祝福と解釈されます。

主がアブラハムを選んだ理由

神がアブラハムを選んだ理由は、彼の信仰と従順にあります。アブラハムは神の命令に対して無条件に従い、その信仰によって神との特別な契約を結びました。以下に、神がアブラハムを選んだ理由とその背景を詳しく説明します。

信仰と従順:

  • 召命の場面: アブラハムは75歳の時、神から故郷を離れ、神が示す地へ行くよう命じられました。彼は疑うことなく神の命令に従い、家族と共に旅立ちました。
  • 神の約束: 神はアブラハムに対して、彼を大いなる国民とし、彼の名を大いにすること、そして地上のすべての家族が彼によって祝福されることを約束しました。この約束は、アブラハムの信仰と従順に対する報いとされます。

聖書の記述(創世記12:1-3):

  • 「主はアブラムに言われた。『あなたはあなたの国を出て、あなたの親族や父の家を離れ、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。わたしはあなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者を呪う。地上のすべての家族はあなたによって祝福される。』」

創世記におけるアブラハム以降のエピソード

アブラハムの物語の後、創世記にはいくつかの重要なエピソードが続きます。以下は、そのエピソードの概要です。

1. イサクの物語(創世記21-26章)

  • イサクの誕生とハガルとイシュマエルの追放(創世記21章)
    • 神の約束により、サラは高齢でイサクを出産します。サラの要望で、ハガルとイシュマエルは追放されますが、神はイシュマエルにも大いなる国民を約束します。
  • イサクの犠牲(創世記22章)
    • 神はアブラハムの信仰を試すため、彼にイサクを捧げるよう命じますが、最終的に神はイサクを救い、アブラハムの信仰を称賛します。
  • サラの死と埋葬(創世記23章)
    • サラが127歳で亡くなり、アブラハムはヘブロンのマクペラの洞窟を購入し、彼女を埋葬します。
  • イサクの結婚(創世記24章)
    • アブラハムは息子イサクのために、従僕を送り出し、リベカを妻として迎え入れます。
  • アブラハムの死(創世記25章)
    • アブラハムは175歳で亡くなり、イサクとイシュマエルによってマクペラの洞窟に埋葬されます。

2. ヤコブとエサウの物語(創世記25-36章)

  • ヤコブとエサウの誕生(創世記25章)
    • イサクとリベカの双子の息子として、ヤコブとエサウが生まれます。エサウが長男の権利をヤコブに売るエピソードがあります。
  • ヤコブの祝福と逃亡(創世記27-28章)
    • ヤコブはイサクを騙して長男の祝福を得ます。その後、兄エサウの怒りを避けるため、ハランに逃げます。
  • ヤコブの結婚と子供たちの誕生(創世記29-30章)
    • ヤコブはラバンの娘、レアとラケルと結婚し、12人の息子をもうけます。
  • ヤコブとエサウの再会(創世記32-33章)
    • 長年の別離の後、ヤコブはエサウと再会し、和解します。

3. ヨセフの物語(創世記37-50章)

  • ヨセフの夢と兄弟たちによる裏切り(創世記37章)
    • ヨセフは夢を見て、自分が兄弟たちよりも優れることを予知しますが、兄弟たちは嫉妬し、彼を奴隷として売ります。
  • ヨセフのエジプトでの成功(創世記39-41章)
    • ヨセフはエジプトでポティファルの家に仕え、その後ファラオの夢を解き明かし、エジプトの総理大臣となります。
  • 兄弟たちとの再会と和解(創世記42-45章)
    • ヨセフはエジプトで兄弟たちと再会し、彼らを許し、家族をエジプトに迎え入れます。
  • ヤコブの死とヨセフの死(創世記49-50章)
    • ヤコブは息子たちを祝福し、エジプトで亡くなります。彼の死後、ヨセフも亡くなり、エジプトで埋葬されます。

創世記の結末

創世記は、旧約聖書の最初の書物であり、天地創造から始まり、アブラハム、イサク、ヤコブ、そしてヨセフの物語を通じてイスラエルの祖先たちの歴史を描いています。創世記の最後の部分は、ヨセフの物語で終わります。

創世記の結末(創世記50章)

  1. ヤコブの死と埋葬(創世記50:1-14):
    • ヤコブ(イスラエル)はエジプトで亡くなり、彼の息子たちは彼の遺体をカナンの地に運び、アブラハムが購入したマクペラの洞窟に埋葬します。ヤコブの死後、息子たちはヨセフに許しを求めます。
  2. ヨセフの許しと兄弟たちへの安心(創世記50:15-21):
    • ヨセフの兄弟たちは、父の死後、ヨセフが彼らに復讐するのではないかと恐れます。しかし、ヨセフは彼らを許し、神の計画により彼がエジプトに送られたことを説明します。「あなたがたは私に悪を企んだが、神はそれを良いことに変え、今日のように多くの人々の命を救おうとされたのです」(創世記50:20)。
  3. ヨセフの死(創世記50:22-26):
    • ヨセフはエジプトで110歳まで生き、彼の兄弟たちとその家族に対して、神がいつか彼らを約束の地に導くことを約束します。彼は死ぬ前に、自分の遺骨をカナンの地に持って行くよう遺言を残し、その後、エジプトで亡くなります。

結論

創世記は、ヤコブとヨセフの死をもって終わり、イスラエルの民がエジプトに留まることを示しています。この状況が、出エジプト記で描かれるイスラエルの民のエジプト脱出と解放の物語の前提となります。

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