エレベーターの「頭脳」:ボタンの裏にあるアルゴリズムの進化
エレベーターのかご内の鏡は、閉所恐怖症を和らげるために設置されたという実用的な心理トリックだとご存知でしたか。
狭い空間の圧迫感を和らげ、時間を短く感じさせる効果があるそうです。
さて、そんなエレベーターですが、私たちが何気なくボタンを押した瞬間、その裏では高度な計算が走っているのをご存じでしょうか。
特にいま、海外の技術者の間では「エレベーターアルゴリズム」の進化がささやかな話題となっています。
なぜ待ち時間が長く感じるのか、どうすれば快適になるのか。
少しだけ、その仕組みを覗いてみましょう。
基本は「行って戻る」
最も単純なアルゴリズムは「SCAN方式」。
エレベーターが最上階まで行ってから折り返す、いわば掃引のような動きです。
実際には、呼び出しがある最上階までで折り返す「LOOK方式」が広く使われています。
これが、私たちが無意識に期待する基本動作でしょう。
複数台の知恵
ビルに複数台ある場合、制御は一気に複雑に。
一番近い号機を割り当てる単純なやり方では、すぐに満員になったり、同じ階に集中してしまったり。
そこで登場したのが「RSR(Relative System Response)」という考え方。
到着予想時間に加え、積載率や同一方向の重複を避ける「団子運転防止」、近くで待機中の号機への加点など、スコアリングで最適な1台を選びます。
しかも、5秒ごとに再計算され、状況が変われば担当を差し替える柔軟さも持ち合わせています。
指標は待ち時間
快適さの評価には「p50」や「p90」といった分布指標が使われます。
p50が1分なら半数は1分以内に乗れる、p90が2分なら90%が2分以内に乗れるという意味。
人は平均より、たまに訪れる「長い待ち時間」を強く記憶するため、このp90をいかに下げるかが鍵だそうです。
意外な結論
行き先階を事前に入力させる「行き先別エレベーター」は、一見賢く見えますが、実は従来の上下ボタン式より待ち時間が長くなる場合が多いのです。
情報が増えるほど最適化しやすそうですが、かごを固定されてしまい、リアルタイムの再割り当てが効かなくなるのが理由。
柔軟性の損失が、追加情報の利点を上回るという、なかなか奥深い話です。
難しい理論より、現場の単純さが勝ることもある。
技術の進歩は、ときに素朴な解に立ち返るのかもしれませんね。