自分専用の「相棒」を育てる時代 / Hermes Agent × DeepSeek API 導入記
ChatGPT や Claude を毎日使っている人は多いと思います。
質問を投げて、答えが返ってくる。便利です。でも、ふと思いませんか。
「この会話、明日になったら全部忘れられてしまうんだよな」と。
私たちが今使っているAIの多くは、優秀だけれど記憶喪失の天才のようなものです。
昨日あれだけ深い話をしたのに、翌朝にはまた初対面。毎回ゼロから自分のことを説明し直す。
これが当たり前になっています。
でも、もしAIがあなたのことを覚えていてくれたらどうでしょう。
あなたの仕事のクセ、進行中のプロジェクト、よく使う言い回し、過去に交わした何百回もの会話。
それらを踏まえた上で、毎回「おかえりなさい」から始まる関係。
それを実現しようとしているのが、今回紹介する Hermes Agent です。
そして、DeepSeek API との組み合わせを今日は紹介します。
この記事では、両者を組み合わせて自分専用のAIエージェントを立ち上げる方法を、できるだけ分かりやすく解説します。
Hermes Agent とは何者か
Hermes Agent は、AI研究組織 Nous Research が開発したオープンソースのAIエージェントです。
ライセンスは MIT、つまり完全に無料で、誰でも自由に使えます。
最大の特徴は、「学習ループ」を内蔵していること。
これが何を意味するか、具体的に挙げてみます。
Hermes は会話を永続的に記憶します。
過去のやり取りを検索でき、セッションをまたいで「あなたが誰なのか」というモデルを少しずつ深めていきます。さらに、複雑なタスクをこなした後には自分で「スキル」を作り出し、それを使いながら改善していく。
つまり、使えば使うほど賢く、あなた仕様になっていくのです。
そして、Hermes はあなたのいる場所で生きます。
ターミナルだけでなく、Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、Signal、メールから話しかけられます。
クラウドの小さなサーバーに住まわせておけば、あなたが寝ている間も働き、朝になったら Telegram に「今日のレポートです」とメッセージを送ってくる ─ そんな相棒になります。
なぜ DeepSeek API なのか
エージェント本体(Hermes)は、いわば「身体と司令塔」です。
実際にものを考える「頭脳」にあたるのが、LLM(大規模言語モデル)です。Hermes は頭脳を自由に選べる設計になっていて、Claude でも GPT でも、好きなモデルを差し替えられます。
その中で、なぜ DeepSeek を選ぶのか。理由はシンプルで、圧倒的なコストパフォーマンスです。
DeepSeek は、高い性能を保ちながら、トークンあたりの料金が主要モデルと比べて桁違いに安いことで知られています。
エージェントというのは、裏側で何度もモデルを呼び出して動くため、使い方によってはトークン消費がかさみます。
だからこそ、安く動かせるかどうかは実用上とても大事なのです。
「自分専用のAIを24時間動かしっぱなしにする」── そんな贅沢が、DeepSeek なら現実的なコストで叶います。
すでに DeepSeek API を使っている人なら、新しくアカウントを作る必要すらありません。
導入手順:30分で相棒が立ち上がる
それでは、実際に組み立てていきましょう。
今回は Mac での手順を例にしますが、Linux や Windows(WSL2)でもほぼ同じです。
ステップ1:Hermes Agent をインストールする
ターミナルを開いて、次の一行を貼り付けて実行します。
Copycurl -fsSL https://hermes-agent.nousresearch.com/install.sh | bash
このインストーラが、必要なもの(Python、Node.js、その他のツール群)をまとめて自動で揃えてくれます。
終わったら、シェルを再読み込みします。
Mac の標準は zsh なので:
Copysource ~/.zshrc
コマンド操作が苦手な方は、公式サイトから配布されている Hermes Desktop インストーラ(macOS / Windows 版)を使えば、クリックだけでインストールできます。
ステップ2:頭脳に DeepSeek を設定する
ここが心臓部です。
次のコマンドを実行すると、対話形式で頭脳(プロバイダ)を選べます。
Copyhermes model
表示されるリストから DeepSeek を選び、お持ちの API キーを入力します。
これだけです。
コマンドで直接設定したい場合は、こうも書けます。
Copyhermes config set DEEPSEEK_API_KEY sk-あなたのAPIキー
入力したキーは ~/.hermes/.env という設定ファイルに安全に保存されます。
ちょっとした実用のヒントとして、すでにサイト運営などで DeepSeek API を使っている方は、Hermes 専用に別のAPIキーを発行しておくのがおすすめです。
そうすれば、エージェントがどれだけトークンを消費しているかを切り分けて把握でき、コスト管理がぐっと楽になりますよ。
ステップ3:最初の会話をしてみる
さあ、起動してみましょう。
Copyhermes --tui
画面にバナーが表示され、そこに DeepSeek のモデル名が出ていれば、設定は成功です。
試しに、こんなふうに話しかけてみてください。
今いるフォルダの中身を見て、このプロジェクトのメインになっているファイルが何か教えて。
Hermes が実際にあなたのターミナルでコマンドを実行し、フォルダを覗き込んで答えを返してくる。
ただ質問に答えるだけでなく、自分で手を動かす様子が見られるはずです。
この瞬間、「ああ、これはチャットボットとは違うものなんだ」と実感できると思います。
ここまでで、あなた専用のAIエージェントは無事に立ち上がりました。
ひとつだけ、正直なアドバイス
DeepSeek はコスパも性能も素晴らしいモデルですが、Hermes のように何段もツールを呼び出す複雑な作業では、ごくまれに挙動が不安定になることがあります。
でも心配はいりません。Hermes は ロックインなしが信条で、hermes model を実行すればいつでも頭脳を別のモデルに切り替えられます。
普段は安い DeepSeek をメインに、ここぞという難しいタスクのときだけ高性能なモデルに切り替える。
そんな使い分けが、コマンド一発でできるのです。
さらに先へ:相棒に「仕事」を覚えさせる
基本の会話が動いたら、ここからが本当の楽しみです。
土台が安定してから、次の層を足していきましょう。
スマホから話しかけられるようにする
Copyhermes gateway setup
これを実行して Telegram などと連携させれば、外出先からスマホで相棒に指示を出せるようになります。
電車の中で「あの件、調べておいて」と送り、目的地に着く頃には答えが返っている。
そんな使い方ができます。
決まった時間に自動で動かす
Hermes には cron スケジューラが内蔵されています。
「毎朝7時にニュースをまとめて送って」「毎週金曜の夜にバックアップを取って」といった指示を、自然言語のまま登録できます。
あなたが何もしなくても、相棒が裏で勝手に働いてくれるのです。
スキルを身につけさせる
Hermes には「スキル」という仕組みがあります。
これは特定の作業の手順書のようなもので、hermes skills browse で公開されているスキルを探したり、自分で書いたりできます。
一度覚えさせれば、その作業はいつでも呼び出せるようになります。
あなたの相棒だけの「特技」が、どんどん増えていくのです。
どんな未来が待っているのか
少し想像してみてください。
これまでAIは、巨大なテック企業が運営する、みんなで共有する「公共のサービス」でした。
私たちはそこに間借りして、賢い頭脳を借りていた。
便利だけれど、それは決してあなただけのものではありませんでした。
Hermes と DeepSeek の組み合わせが指し示しているのは、その逆の未来です。
自分の手元で動き、自分のことだけを覚えていて、自分のために働く、自分専用のAI。
しかもそれが、オープンソースで、月に数百円のコストで、誰の許可もいらず手に入る。
これは、パソコンの歴史が一度たどった道に似ています。
かつてコンピューターは、大企業や大学だけが持てる巨大な機械でした。
それがやがて、一人ひとりの机の上にやってきた。
「パーソナル」コンピューターの誕生です。
世界はそこから大きく変わりました。
今、同じことがAIで起ころうとしています。
共有のAIから、パーソナルなAIへ。
あなたの相棒は、最初は何も知りません。
でも、一緒に過ごすうちに、あなたの仕事を覚え、あなたの好みを学び、あなたが言わなくても先回りするようになる。
何年も連れ添ったアシスタントのように。
それは「ツール」というより、もはやあなたの一部の外部化と呼ぶべきものかもしれません。
そして、その相棒を育てるのに必要なのは、巨額の資金でも特別な権限でもありません。
ターミナルに一行のコマンドを打つ、ほんの少しの好奇心だけです。
未来は、待つものではなく、自分の手で立ち上げるものになりました。
さあ、あなたも自分の相棒を、育て始めてみませんか。
おわりに
この記事では、Hermes Agent と DeepSeek API を組み合わせて、自分専用のAIエージェントを立ち上げる方法を紹介しました。難しそうに見えて、実際にやってみると驚くほど簡単です。
まずは小さく始めて、少しずつ相棒に仕事を覚えさせていく。
その過程そのものが、きっと楽しいはずです。
うまくいかないことがあれば、hermes doctor というコマンドが問題を診断してくれます。
困ったときの心強い味方です。
それでは、よいAIライフを。