北海道と聞くと、多くの人は雄大な自然や美味しい食べ物を思い浮かべるでしょう。
でも実は今、「宇宙の町」として世界から注目されている場所があるのをご存知でしょうか?
それが十勝地方の 大樹町。
ここでは現在、「北海道スペースポート(HOSPO)」が整備され、海外の宇宙企業も関心を寄せています。
今回は、なぜ大樹町がロケット打ち上げの拠点として注目されているのかをわかりやすく紹介します。
宇宙ビジネスという言葉を聞くと、自分には関係ないとか、大企業の話でしょう?と思うかもしれません。
でもかつてインターネットがそうでしたよね。
今や企業単位や個人単位で誰もがインターネットでビジネスをしています。
宇宙ビジネスもおそらく15〜20年で個人で誰でも参入できる業界になっているはずです。
種子島の2倍の打ち上げ能力?
十勝地方にある大樹町は、かつてから航空と宇宙の実験の拠点として機能してきました。
今、ここが「日本の民間宇宙港」として注目されている最大の理由は、太平洋に面した独自の地形 にあります。
米国がケープカナベラルとヴァンデンバーグを衛星の軌道ごとに使い分けてきたように、日本でも「宇宙活動法」に基づきロケットの飛行方向(打上げ方位角)が制限されています。
- 種子島宇宙センターは静止衛星を打ち上げる真東(方位角90度)に有利
- しかし、太陽同期軌道を狙う場合は、フィリピンに近づきすぎるため大きなコース修正(ドッグレッグ・ターン)が必要で、燃料を余計に消費してしまいます
その点、大樹町は東と南に広く海が開けており、南への打ち上げに大きなコース修正が不要になるんです。
これが「地の利」と呼ばれる所以です。
HASTICの試算が示す優位性
北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)の試算によれば、大樹町射場の打上げ方位角は 80~170度 と広く、真東にも南方向にも対応可能。
そして、太陽同期軌道への打ち上げでは、
- 種子島の 2倍
- 内之浦の 1.4倍
のペイロード能力が見込まれています。
つまり、同じロケットを使っても「より多くの衛星を運べる」という計算になります。
太陽同期軌道需要と大樹町
日本では、合成開口レーダー(SAR)や光学観測衛星のコンステレーション計画が次々と進み、太陽同期軌道を利用する需要が急増しています。
静止軌道は北海道から不利ですが、太陽同期軌道に関しては大樹町が非常に有利な射場なのです。
インターステラテクノロジズ(IST)が開発中の小型ロケット 「ZERO」 は、太陽同期軌道に約250kgの衛星を投入できる能力を目指しており、再使用ロケットの実験も進められています。
宇宙港(スペースポート)って何?
宇宙港とは、ロケットを組み立てて打ち上げるための拠点のこと。
「港」とつくだけに、宇宙へ旅立つための出入口の役割を果たしています。
ロケットを打ち上げる場所には、以下のような条件が必要です。
- 広い海に面していること(落下物のリスクを避けるため)
- 安定した気象条件
- 打ち上げ方向に安全な空域・海域があること
- インフラ整備や法制度の後押し
こうした条件を満たす場所は世界でも限られており、日本では鹿児島県の 種子島宇宙センター や 内之浦宇宙空間観測所 が有名です。
世界の潮流:赤道から高緯度へ
かつては「赤道に近い方が有利」とされてきました。地球の自転の力を使って効率的に人工衛星を打ち上げられるからです。
しかし最近は、地球観測やインターネット衛星網に欠かせない 極軌道・太陽同期軌道 への打ち上げ需要が急増。
これらは南北に通る軌道を飛ぶため、むしろ 高緯度で海に面した場所 の方が適しているのです。
そこで、北の大地・北海道にある大樹町が浮上してきました。
大樹町の宇宙との関わり
大樹町は、実は1980年代から航空宇宙に積極的に取り組んできた町です。
- 1985年:広大な滑走路が整備され、実験機の飛行試験が開始
- 2002年:小型ロケット「CAMUI」の打ち上げ実験
- 2013年以降:インターステラテクノロジズ(IST)が活動を開始
- 2019年:「MOMO」ロケットで高度100km超えに成功、日本初の民間宇宙到達
町ぐるみで宇宙産業を育ててきた歴史があり、今も「宇宙のまちづくり」を続けています。
「地の利」が生む優位性
大樹町は東と南が太平洋に開けているため、南北軌道への打ち上げがしやすい地形です。
HASTIC(北海道宇宙科学技術創成センター)の試算によると、太陽同期軌道への打ち上げでは、
- 種子島の 約2倍
- 内之浦の 約1.4倍
ものペイロード(積載量)を運べる可能性があるとされています。
つまり「同じロケットでも、よりたくさん積める」のが大樹町の強みなのです。
海外からの注目も集まる
近年、大樹町には海外の宇宙企業も続々と関心を示しています。
- 2025年6月:台湾の jtSpace が観測ロケットを打ち上げ試験(天候で中止)
- 2025年7月:米国の Firefly Aerospace と「Alpha」ロケット打ち上げの合意を締結
地理条件は後から動かせないため、今ある環境を求めて世界から企業が集まってきているのです。
北海道移住と「宇宙のまち」
北海道での暮らしは、自然や食の魅力だけではありません。大樹町のように、宇宙開発の最前線 に触れられるチャンスがあるのも大きな魅力です。
「今日の夜空に浮かぶ星の下で、明日飛び立つロケットの音を聞く」――そんな体験ができるのは、全国広しといえども大樹町ならでは。
宇宙好き、テクノロジー好きにとっては、移住先として夢が広がる場所だと言えるでしょう。
宇宙ビジネスに参入?!
さて、現在北海道足寄町でRTK測位用の基地局を運用しています。
個人的にこれは非常に大きな強みであると感じています。
理由は、現在の宇宙ビジネスは「ロケットや衛星を作る」だけでなく、その データを活用して地上で新しい価値を生む領域 にシフトしているからです。
GPSやRTKはまさにその核となる技術です。
ここから個人事業主レベルでも可能 で、しかも拡張性のある「GPS/RTK技術を活用した宇宙ビジネス」5つを提案します。
精密農業(スマート農業)支援サービス
- RTK測位で農機具の自動運転や植え付け・収穫の精度向上を支援。
- ドローンと連携し、肥料・農薬散布の自動化や収量予測サービスを提供。
- 北海道は大規模農業が多いため需要が大きい。
- RTK基地局を使い農家向けに「高精度測位サブスクサービス」を提供可能。
- 農家が使う既存機械(トラクター・ドローン)に安価な受信機を組み合わせる事業モデル。
自動運転・物流向け「高精度地図データ提供」
内容
- 北海道は広大な道路網があり、物流や自動運転の実証実験が多い。
- RTK測位で道路や農道の「高精度3Dマップ」を作成し、自動運転車両やAGV(無人搬送車)向けに提供。
- 測位+プログラミングスキルで、地図生成・API提供サービスを構築。
- 物流企業や自治体向けに「実証実験サポート業務」として展開可能。
災害対応・インフラ点検サービス
- 北海道は地震・豪雪・土砂災害が多いため、ドローン+RTK測位で「災害発生直後の高精度地図」を提供。
- 橋梁・道路・河川インフラの変位や劣化をRTKで計測し、自治体にレポートを納品するビジネス。
- 災害発生時の迅速な空撮・点群データ提供で、自治体と業務契約を結びやすい。
- 専門家ネットワークを活かし「測位+AI解析」の付加価値をつけられる。
精密アウトドア・観光ガイドサービス
- RTKを利用した「誤差数センチ」の位置情報で、観光・アウトドアに新しい体験を提供。
例:- 山岳ルートの「正確な安全ナビゲーション」
- 釣り・カヌー・サイクリングの高精度ルート記録
- 観光地向け「拡張現実(AR)体験」
- 北海道移住ブログやSNSと連動させて「宇宙技術を使った観光サービス」として展開可能。
- 地元観光協会やアクティビティ会社と提携し、BtoCサービスとして小規模からスタートできる。
「測位データ × ブロックチェーン」認証サービス
- RTK測位による「物や人の位置」を正確に記録し、ブロックチェーン上で改ざん不可能な形で保存。
- 活用例:
- 農産物の生産履歴・輸送ルートのトレーサビリティ
- 高精度測位を利用した「位置証明サービス」
- eスポーツ/ドローンレースでの「正確な順位判定」
- プログラマーと組んで小規模なプロトタイプを作り、実証実験から参入。
- 補助金(宇宙・農業・DX分野)を活用すれば、低リスクで試せる。
まとめ
- 大樹町は東と南が海に面し、南北軌道に有利な地形
- 種子島や内之浦より効率的に衛星を打ち上げられる可能性
- 長年の宇宙実験の歴史と海外企業の関心で、世界から注目を集めている
「北海道移住 × 宇宙」という意外な組み合わせ。
大樹町はこれから、宇宙の夢を身近に感じられる町としてますます輝いていくはずです。