地球を周回する人工衛星の数は近年急増しており、2025年時点でおよそ1.1〜1.2万基の現役衛星が軌道上に存在しています。
これは数年前の倍以上に達する規模で、スペースX社のスターリンクなど民間のメガコンステレーション(多数衛星による通信網)の打ち上げが大きく寄与しています。
用途と種類
衛星の用途別に見ると、通信衛星が圧倒的に多く、全体の6割以上(約8,000基超)を占めています。
これにはインターネット通信やテレビ放送、衛星電話などに使われる衛星が含まれます。
次に多いのが地球観測衛星(リモートセンシング衛星)で、地球の画像撮影、環境・気象監視、災害観測などを目的とするものが全体の約8〜10%(1,000基超)あります。
その他、新技術の実証を行う技術実験衛星が数百基(全体の2〜3%)、GPSなどの航法衛星(旧型測位衛星)が約100基(全体の1%前後)、宇宙望遠鏡などの科学ミッション衛星が約100基(1%程度)と続きます。
GNSS測位の数などは後述します。
なお、軍事目的の衛星も一部存在しますが、多くの通信・観測衛星は民間や公共用途と共用されており、純粋に軍事専用といえる衛星は全体の一部に留まります。
今後もインターネット通信網の拡充などに伴い衛星数はさらに増える見込みです。一方で、急増する衛星は宇宙ゴミ問題や電波干渉など新たな課題も招いており、持続的な宇宙利用の観点から各国機関が対策を検討しています。
各国の衛星測位システム(GNSS)の概要
システム | 運用中の衛星数 |
---|---|
GPS(米) | 約31基 |
GLONASS(露) | 約24基 |
BeiDou(中) | 約44基 |
Galileo(欧) | 約25基 |
QZSS(日本) | 4基(将来7基) |
IRNSS/NavIC(印) | 7基 |
合計 | 135基前後 |
続いて、世界の主要な衛星測位システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)について、アメリカ・ロシア・中国・EU・日本の各システムを中心にまとめます。GNSSとは、全球測位衛星システムとも呼ばれ、地球上の位置や時刻を高精度に測定するための人工衛星ネットワークです。
システム | 衛星名 | 打ち上げ日 | 世代 / 型式 | 軌道 |
---|---|---|---|---|
GPS | GPS III-08 | 2025-05-XX | Block III | MEO 約20,200km |
Galileo | FOC FM30 | 2024-09-17 | FOC | MEO 約23,200km |
BeiDou | BeiDou-3 MEO-XX | 2023-12-XX | BeiDou-3 | MEO/GEO/IGSO |
GLONASS | GLONASS-K2 No.XX | 2023-08-XX | K2 | MEO 約19,100km |
QZSS | QZS-1R | 2021-10-26 | みちびきシリーズ | 準天頂軌道 |
NavIC | IRNSS-1J | 2023-05-29 | NavIC第2世代 | GEO/IGSO |
アメリカ:GPS (Global Positioning System)
- システム概要と開発背景: GPS(全地球測位システム)は米国が開発した全球衛星測位システムで、もともと米国国防総省が1970年代から開発を進めました。
初号機は1978年に打ち上げられ、24基の衛星からなる初期コンステレーションが1995年4月に「完全運用能力」を達成しています。
冷戦期の軍事利用を端緒としますが、1990年代以降は民間にも開放され、現在では世界中で日常的に利用されています。 - 衛星数と軌道配置: GPS衛星は中軌道(MEO: Medium Earth Orbit)を周回しており、高度約20,200kmの円軌道に投入されています。
軌道傾斜角は約55度で、地球を6つの軌道平面に分けて配置され、各平面に4基ずつ計24基が基本配置となっています。
この24基で地球全域をカバーできますが、実際には予備衛星を含め常時30基前後が運用されています。
2023年時点で31基のGPS衛星が稼働中であり、予備機も含めてサービスを維持しています。各GPS衛星は約12時間で地球を1周し、任意の地点で常に4基以上が上空に見えるよう設計されています。 - 衛星の型式・特徴: GPS衛星は世代ごとにブロック (Block) と呼ばれる型式に分かれます。1990年代運用のBlock IIシリーズから改良が重ねられ、2000年代後半以降は新世代のBlock IIF(より長寿命・信号の精度向上)や、2018年以降順次打ち上げられたBlock III衛星が投入されています。
最新のGPS Block III衛星は、新しい民生用信号(L5帯や将来のL1C信号)や軍用の高耐干渉信号(Mコード)を搭載し、精度・信頼性が向上しています。
また設計寿命も15年程度と延びています。GPS全体としては米宇宙軍(旧空軍宇宙軍団)により維持・運用されており、今後もBlock III世代への更新が進められる予定です。
ロシア:GLONASS (グロナス)
- システム概要と開発背景: GLONASS(グロナス、ロシア語: Globalnaya Navigatsionnaya Sputnikovaya Sistema)はロシア(旧ソ連)が運用する全球衛星測位システムです。
ソ連時代の1976年に開発が始まり、1982年に最初の衛星が打ち上げられました。
1995年に24基の衛星配置が一応完了し一時は全球カバーを達成しましたが、90年代後半の財政難で衛星数が減少しました。
その後2000年代に入り国家優先計画として復旧が進められ、2011年10月に再び24基のフルコンステレーションが回復して世界全域でサービス提供可能となりました。
GLONASSはGPSに次いで運用された世界で2番目のGNSSであり、ロシア国内では軍民両用の戦略インフラとなっています。 - 衛星数と軌道配置: GLONASS衛星もGPS同様に中軌道(高度約19,100km)を周回します。
軌道傾斜角は約64.8度とGPSより大きく、高緯度地域(極地付近)での測位精度向上に寄与しています。
衛星は3つの軌道平面に8機ずつ配置され、完全運用状態では計24機で全球をカバーします。
ロシア全土をカバーするだけなら18機で足りる設計ですが、全球カバーには24機が必要です。
現在は常時24機が稼働するよう維持されており、2024年初め時点で26機が軌道上にあってこのうち24機が運用中となっています。
予備機を含めて安定運用が図られています。各GLONASS衛星の公転周期は約11時間16分(GPSよりわずかに短い)で、地上から見ると8日毎に同じ位置を通過するよう配置されています。 - 衛星の型式・特徴: GLONASS衛星も世代交代が行われており、初期の「GLONASS」シリーズから寿命・性能を向上させたGLONASS-M衛星(寿命7年程度)が2000年代以降主力となりました。
さらに2010年代からは新世代のGLONASS-K衛星(寿命10年以上、送信信号の改良)が投入され、2020年代には後継のGLONASS-K2の打ち上げも開始されています。
GLONASSの大きな特徴として、従来は各衛星が異なる周波数で信号を送るFDMA方式を採用していた点が挙げられます(GPSなど他システムは同一周波数で異なるコードを送るCDMA方式)。
しかし将来的には他GNSSと同様のCDMA方式の新信号も導入予定で、互換性向上が図られています。
現行のGLONASS衛星は軍用の高精度信号も提供しますが、暗号化ではなく「秘匿仕様(詳細非公表)」のコードである点も特徴です(GPSの軍用信号は高度に暗号化されています)。
中国:BeiDou (北斗)
- システム概要と開発背景: BeiDou(ベイドウ、北斗)は中国が構築した衛星測位システムです。1990年代に、中国軍が外国(米GPS)への依存を避ける戦略から独自開発を開始しました。
開発は3段階で進められ、まず試験的な「北斗1号」(BeiDou-1)システムが2000〜2003年にかけて3機の衛星で開始されました。
次に10機以上の衛星からなる地域システム「北斗2号」(BeiDou-2, コンパス)が2012年までにアジア太平洋域で運用開始し、最終段階として**全球システム「北斗3号」(BeiDou-3)**が2020年までに完成しています。
2020年6月に55機目のBeiDou衛星が打ち上げられ、これをもって全球測位網が正式に完成したと宣言されました。
BeiDouという名称は北斗七星に由来し、中国はGPSやGLONASSに対抗しうる自前のGNSSを持つに至りました。 - 衛星数と軌道配置: BeiDouシステムは他国のGNSSと異なり、複数の軌道種類の衛星で構成される点が特徴です。
全球版のBeiDou-3は中軌道衛星 (MEO)・静止衛星 (GEO)・**傾斜静止軌道衛星 (IGSO)**を組み合わせた計30機(名目構成)からなります。
具体的には高度約21,500kmのMEO軌道に24機、赤道上空約3.6万kmの静止軌道に3機、軌道傾斜角55度の傾斜地球同期軌道(24時間周期)に3機を配置し、これらで全球をカバーします。
各衛星間でのリンク機能も備え、効率的な運用が可能です。
加えて、旧世代のBeiDou-2から引き続き運用中の衛星もあり、2023年末時点で中国は合計44機(GEO:7機、IGSO:10機、MEO:27機)の測位衛星を運用中と報告されています。
このうち約30機が最新世代のBeiDou-3衛星で、残りはBeiDou-2世代の衛星が補完的に使われています。 - 衛星の型式・特徴: BeiDou衛星も世代によって性能が強化されています。
初期のBeiDou-1は3機のみで中国国内限定の実験サービスでした。
BeiDou-2(コンパス)では衛星数を増やし5機のGEOと5機のIGSO、4機のMEOでアジア太平洋をカバーしました。
最新のBeiDou-3衛星では原子時計の高精度化や、衛星間通信リンク、新周波数でのオープンサービス提供、高精度(センチメートル級)補強サービスなどが実現しています。
またGPSやGalileoとの互換性も考慮し、一部の周波数帯や信号フォーマットは他GNSSと共通化されています。
中国は将来のさらなる精度向上に向け、地上補強システムや拡張構想にも取り組んでおり、BeiDouシステムは中国のみならず周辺国やBelt and Road参加国への展開も図られています。
ヨーロッパ連合:Galileo (ガリレオ)
- システム概要と開発背景: Galileo(ガリレオ)は欧州連合(EU)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で構築した衛星測位システムです。
世界で初めて民間主導で運用されるGNSSとして企画され、米露の軍事主導のGNSSに対する独立性確保と商業利用促進を目的に2000年代初頭から開発が始まりました。
2005年に試験衛星GIOVE-Aを打ち上げて周波数枠を確保し、2011年に最初の運用機が軌道投入されました。
その後段階的に衛星を増やし、2016年末に初期サービスが開始されています(欧州測位サービスセンターによる「初期運用」宣言)。
ガリレオは多国間協力プロジェクトとして進められ、本部はチェコ・プラハに置かれています。 - 衛星数と軌道配置: Galileoの衛星は、GPS同様に高度約23,200kmの中軌道(MEO)を周回し、軌道傾斜角は約56度に設定されています。
軌道は3つの平面に配置され、満足なサービス提供には24機の運用衛星が必要となります(27機稼働+3機予備の計30機体制を目標)。
2020年代前半までに次々と衛星が打ち上げられ、2024年9月時点で25機が運用中と報告されています。
2024年にはスペースXのロケットによりGalileo衛星29号機・30号機が打ち上げられ、軌道上でテストの後2024年8月にサービスに投入されました。
これにより3平面のうち2平面が所定数で完全充足し、残る1平面も含めコンステレーション完成が目前となっています。
Galileoは最終的に予備衛星を含む30機体制で全世界で測位・時刻サービスを提供する計画です。 - 衛星の型式・特徴: Galileo衛星は一世代の衛星ユニット(FOC: 完全運用能力段階衛星)でほぼ統一されています。
初期に4機の検証衛星(IOV)を打ち上げた後、OHBシステム社などが製造した実用衛星を2014年以降継続的に投入しました。
各衛星は高精度な水素メーザー原子時計等を搭載し、GPSより一桁高い精度を目指しています。
またGalileoは民生向けのオープンサービスの他に、認証付き商用サービスや捜索救難(SAR)サービス、公共規模向け高信頼サービス(PRS)など多彩なサービスを提供する点も特徴です。
管理運用はEU宇宙プログラム機関(EUSPA)が担い、ESAは技術開発を担当しています。将来計画としては第2世代衛星の開発が進められており、2026年以降に新型衛星の打ち上げが予定されています。
日本:準天頂衛星システム (QZSS、「みちびき」)
- システム概要と開発背景: 日本の準天頂衛星システム(QZSS: Quasi-Zenith Satellite System、「みちびき」)は、GPS信号を日本国内で増強し精度向上させる目的で計画・整備された地域型測位システムです。
2002年に概念検討が始まり、2010年に初号機「みちびき1号(QZS-1)」が打ち上げられました。
当初3機体制を想定していましたが、その後4機体制に拡充され、2017年までに4機の衛星(みちびき1号〜4号)を投入し2018年11月に正式サービスを開始しました。
QZSSはGPS衛星からの信号を補強するサブシステム的性格が強いですが、日本独自の測位インフラとして災害時のバックアップや、高精度測位(センチメータ級:日本版GPS補強サービス「MICHIBIKIセンチメータ級定位補強サービス」など)の提供にも寄与しています。 - 衛星数と軌道配置: 準天頂衛星は日本付近の天頂付近に長時間留まるよう設計された特殊な軌道を採用しています。
3機の衛星がそれぞれ「準天頂軌道」と呼ばれる高楕円の傾斜地球同期軌道に投入され、軌道周期はちょうど24時間ですが軌道傾斜角を約43°付けることで地上から見ると8の字を描きながら日本上空に長時間滞在します。
この3機を120°ずつ軌道経度をずらして配置することで、常時1機が日本の天頂付近に現れるようになっています。
加えて、もう1機が静止軌道(GEO)に配置され、日本上空(経度127°E付近)に常時とどまって広域補強信号を送っています。
現在運用中の4機(QZS-1R,2,3,4)はこの3準天頂+1静止の構成です。さらに日本政府は独立測位を可能とする7機体制への拡張を決定しており、2023〜2024年に追加3機(QZS-5〜7号)の打ち上げ。
7機体制では準天頂軌道衛星4機、静止軌道衛星2機、そして1機は準同期(擬似静止)軌道といって静止軌道に近い軌道傾斜角を持つ衛星になる計画です。
これにより一層のサービス安定性と、日本のみで完結する測位サービスの提供が可能となります。
最新の情報
QZS‑6 が2025年2月2日に打ち上げられ、2月中に静止軌道に入りました。
また、2025年7月18日より、衛星測位サービス、高精度補強、SBAS、信号認証などの新サービスが順次提供開始されています。
日本政府は「GPSに依存しない日本単独の測位が可能な7機体制」構築を目標としており、QZS‑5とQZS‑7の打ち上げを含めて2025年度中に7機体制を実現する計画で、将来的には11機体制も視野に入れています。
- 衛星の型式・特徴: QZSSの衛星は「みちびき」の愛称で呼ばれ、現在運用中の2〜4号機および予備機の1R号はいずれも三菱電機が製造した同型機です。
各衛星はL帯のGPS互換信号に加え、誤差補正情報やテキストメッセージを送信できるトランスポンダ(災害時の「通報メッセージサービス」など)も搭載しています。初号機(QZS-1)は設計寿命を超え2023年に退役しましたが、後継のQZS-1Rが2021年に打ち上げられ引き継いでいます。
今後投入される予定のQZS-5〜7号機では、一部が静止衛星となるほか、中軌道からの測位補完用として日本版GPSとも言える独自周波数での測位信号提供も検討されています。
QZSSはあくまで地域システムであり単独では全球測位はできませんが、GPS等と併用することで都市部のビル陰対策や測位精度・信頼性向上に大きく貢献しています。
災害情報
受信機を持っていればみちびきから災害情報などを受信できます。
古野電気:QZ‑DC1などで検索してみてください。
利用形態 | 機器(受信機・モジュール) | アンテナ | 特記事項 |
---|---|---|---|
通信不要で防災情報を受信 | 古野電気 QZ‑DC1 | 通常GNSSアンテナで可 | 直接衛星からの受信、全国対応 |
自作・試作品系 | ソニー SPRESENSE + GNSSアドオン | 通常GNSSアンテナも可 | QZQSM信号のデコードまで簡単に可 |
プロ仕様・多機能 | u‑blox ZED‑F9P / MAX‑M10S など | 通常LNSSアンテナ対応 | L1S含む複数周波の受信可能 |
受信安定重視 | L1S対応GNSSアンテナ | 明記された専用アンテナ | 高感度・安定性重視に適 |
衛星インターネット通信サービス
スペースXが最も知名度があるのはわかりますが、当然世界各地で類似のサービスは展開しています。
-
Eutelsat –
OneWeb
低軌道(LEO)648機規模のネットワーク。高緯度地域や政府・企業向けに強み。 -
Amazon –
Project Kuiper
FCC規制に基づき1,600基以上を投入予定。最終計画は3,200基規模。 -
Telesat –
Lightspeed
カナダ発の低遅延衛星ネットワーク。2026年以降商用化予定。 -
SES –
O3b mPOWER
中軌道(MEO)による広帯域サービス。2024年商用開始。 -
Viasat
静止衛星(GEO)ベースの老舗プロバイダー。ViaSat-3で世界カバー強化。 -
HughesNet
米国市場で強み。Jupiter 3衛星により最大110 Mbpsを提供。 -
Globalstar / Iridium / Orbcomm
衛星電話やIoT向け通信網。インターネット専用ではないが通信基盤として重要。 -
Lynk Global
既存のスマホを衛星と直接接続するD2D通信を開発中。 -
AST SpaceMobile
スマホ直結の衛星セルラーネットワーク。Vodafoneなどと提携。 -
中国国家プロジェクト –
G60(Qianfan)/ Guowang
数千〜1万機規模の大規模ネットワーク構想。一部は既に打ち上げ開始。
衛星を駆使することで、地上でのプロバイダや中央集権企業への依存を少なくしていくことが可能になります。
また、GPSプログラムなどを使えば移動、農業含め様々な技術を個人レベルで所有することができるため、これからの世界できっと役に立つことでしょう。

音楽家:朝比奈幸太郎
神戸生まれ。2025 年、40 年近く住んだ神戸を離れ北海道・十勝へ移住。
録音エンジニア五島昭彦氏より金田式バランス電流伝送 DC 録音技術を承継し、
ヴィンテージ機材で高品位録音を実践。
ヒーリング音響ブランド「Curanz Sounds」でソルフェジオ周波数音源を配信。
“音の文化を未来へ”届ける活動を展開中。