マイコンとセンサ、ラズパイとGPS、PCとオシロスコープ。
これらを物理的に「つなぐ」ために欠かせないのが、通信インターフェースです。
でも、「UARTとUSBってどう違うの?」「I2Cって複数つなげるって本当?」
そんなふうに思ったこと、ありませんか?
この記事では、ハードウェア初心者から組み込み開発を目指す方までに向けて、「今さら聞けない通信インターフェース」の基本と使い分けをやさしく、かつ実践的に解説します。
🧠通信インターフェースとは?
通信インターフェースとは、電子機器どうしがデータをやり取りするための物理的・論理的なルール(規格)です。
種類によって「信号線の本数」「同時通信の可否」「スピード」「接続距離」などに違いがあります。
📦代表的な通信インターフェース一覧(4選)
名称 | 信号線数 | 通信方式 | 主な用途 |
---|---|---|---|
UART | 2本(TX, RX) | 非同期・シリアル通信 | GPS, マイコン, Bluetoothなど |
USB | 2本(D+, D−)+電源線 | 非同期・ホストスレーブ | PCとの通信、仮想COMポートなど |
I2C | 2本(SCL, SDA) | 同期・シリアル通信 | センサ, EEPROM, LCDなど |
SPI | 最低4本(MOSI, MISO, SCLK, CS) | 同期・全二重 | 高速ADC, SDカード, ディスプレイなど |
同期通信と非同期通信の違いとは?
通信インターフェースを学んでいると、必ずと言っていいほど出てくる用語があります。
それが「同期通信(synchronous communication)」と「非同期通信(asynchronous communication)」という言葉です。
この2つの違いをしっかり理解しておくことは、電子回路設計でもプログラム実装でも、そして何よりトラブルシューティングの場面で「なぜ通信がうまくいかないのか」を見極めるための大きな助けになります。
🕰 同期通信とは?「タイミングを合わせて伝え合う」世界
まず同期通信は、送信側と受信側が「共通のリズム(クロック)」を基準にして通信を行う方式のことを指します。
この共通のクロック信号は、いわば「心拍」や「指揮者のタクト」のような役割を持っていて、通信する両者が同じテンポでデータをやりとりすることを可能にしています。
たとえば、SPI通信やI2C(読み方は、「アイ・スクエアド・シー」または「アイ・ツー・シー」です)通信では、「クロック線(SCLやSCLK)」という専用の線を通じて、どのタイミングで1ビットのデータを送るか・読むかという絶対的なタイミングが常に共有されているわけです。
この仕組みは非常に効率的で、高速で正確な通信が可能となります。
クロックを基準にするので、受信側は「今のこの瞬間にビットを読み取ればいい」と分かっているため、余計な手間がかかりません。
だからこそ、SPIのような同期通信は、高速に大量のデータをやりとりしたいセンサやSDカード、ディスプレイモジュールなどで多く採用されているというわけです。
ただし、同期通信の弱点もあります。
それは、クロック信号そのものが1本の線として必要になることです。
このため、配線は少し複雑になりますし、通信線が長くなると、クロックの歪みや遅延によって誤動作の原因になることもあります。
複数の機器を接続する際にも、クロックの分配や管理には注意が必要です。
📨 非同期通信とは?「話し始めたことを合図で知らせる」しくみ
一方、非同期通信とは、共通のクロックを持たず、データの区切りを送信側が自分で合図を出して知らせる方式です。
いちばん身近な例が、UART(シリアル通信〜ユーアートと読む)でしょう。
UART通信では、送信デバイスが「今からデータを送るよ!」という意味でスタートビットを出し、その後に一定のタイミング(ボーレート)に従ってデータビットを並べていきます。
最後にストップビットで「これで終わり!」と締めくくります。
このように、データの開始と終了をフレーミング(枠)で伝えるのが非同期通信の特徴です。
受信側は、スタートビットが来た瞬間から「このビットは○秒後に読み取る」と自分でタイミングを推測して動作します。
非同期通信の最大の利点は、通信に必要な配線が少ないことです。
通常は送信(TX)と受信(RX)の2本だけで済みますし、クロック線が不要なので、シンプルでコストも安く済みます。
また、ちょっとしたセンサやGPSモジュール、Bluetoothデバイスなど、比較的簡単な構成で使えるモジュールの多くがこの方式を採用しています。
ただし、非同期通信にも注意点があります。
共通クロックがない以上、送信側と受信側の通信速度(ボーレート)をあらかじめ一致させておく必要があるのです。
これがずれていると、ビットが正しく読み取れず、フレーミングエラーやパリティエラーといった問題が発生します。
また、ノイズなどでスタートビットを誤認識してしまうと、受信全体がズレてしまうこともあります。
そのため、通信が不安定な環境では、非同期通信はやや不利になります。
🎯「同期」「非同期」どちらが優れているのか?
じゃあどっちがいいのか?
これはどちらが「正解」というものではありません。
それぞれに適材適所の使いどころがあるというのが、正しい理解への道となるでしょう。
- データ量が多く、速度が求められ、信号が近距離で安定しているなら → 同期通信(SPI、I2C)
- 少ない配線で簡単に通信したい、デバイスが少ない → 非同期通信(UART、RS-232)
あなたがもし「GPSを読みたい」「センサを複数つなぎたい」「PCとマイコンをUSB経由で通信したい」と思ったとき、その通信が同期か非同期かを理解しておくことで、エラーの原因を素早く特定したり、正しい配線やライブラリの選択ができるようになります。
なぜ「FPGAは同期が前提」なのか?
FPGAでは同期通信が大前提となります。
FPGAというのは、CPUのようにソフトウェアで命令を順番に実行するのではなく、論理回路そのものをハードウェアで構成していくプログラマブルデバイスです。
FPGAに関しては筆者のもう一つの技術ブログであるオーディオアカデミー(ここではオーディオ技術に特化しています)にて記事にしていますのでぜひチェックしてみてください。
この論理回路の多くは、「クロック(Clock)」と呼ばれる基準のタイミング信号によって動作を制御されます。
つまり、FPGA内部の回路設計は基本的にこうなっています
- 各フリップフロップ(記憶素子)はクロック信号に同期してデータを更新
- 論理の流れや状態の遷移は、「クロックの立ち上がり」や「立ち下がり」を基準に進行
これが「同期設計(synchronous design)」と呼ばれるスタイルです。
FPGA開発においては、この同期設計を守ることが正しい動作と高い安定性の鍵となります。
もちろんFPGAはこの通信方式自体も“論理回路として自分で実装できる”デバイスとなります。
たとえば、あるデータを次のステップに渡す場合、FPGAでは次のような考え方をします:
- 1つのクロックサイクルで1つの処理を行う
- クロックが立ち上がるごとにすべての信号がタイミング通りに更新される
これにより、FPGA内部の論理ブロックはすべて「共通のリズム」で動作し、信号のタイミングがバラバラになったり、誤った状態遷移が起きることを防ぐことができます。
例えるなら、「全員が同じ指揮者に従って演奏しているオーケストラ」のようなものです。
ただし、FPGAでも技術的には非同期設計は可能です。
しかし、非同期設計は多くのデメリットとリスクがあるため、現場ではほとんど使われません。
非同期設計では、クロックなしでフリップフロップを更新するため、信号遷移のタイミングが不確定になります。
- レースコンディション(競合)
- メタステーブル(不定状態)
- シミュレーションでは動いても実機で暴走
など、非常に扱いづらく、デバッグも困難です。
設計者がタイミングを完全に手動で保証しなければならず、ヒューマンエラーが致命的なバグになるためです。
そのため、FPGA開発では「原則として同期設計のみで回路を書く」というのが業界標準の作法です。
📝実際にトラブルに出会ったときに…
たとえば、UART通信で「何も表示されない!」という場合、原因はUARTの接続そのものではなく、
実は送信側と受信側のボーレートが違っていた、あるいはストップビットの設定が異なっていたといった「非同期通信ならではの落とし穴」が潜んでいることがよくあります。
逆に、SPIで通信が乱れる場合は、クロックの立ち上がり・立ち下がりのタイミング(エッジ)の設定がずれているとか、信号線が長すぎて反射が起きていたなど、同期通信特有のトラブルだったりします。
通信の特徴をしっかり把握し、自分なりのデバッグルートを確保するようにしてください。
🧰通信インターフェースを選ぶときの判断基準
項目 | 判断基準 |
---|---|
配線の本数 | 少ない方がいいなら I2C or UART |
通信速度 | 高速が必要なら SPI |
接続対象 | PC相手なら USB、センサなら I2C or SPI |
同時接続 | 複数デバイス → I2C、個別管理 → SPI |
実装の簡単さ | 初心者向け → UART or USB(仮想COM) |
✅まとめ:今さら聞けない通信インターフェースを理解しよう
インターフェース | 通信方式 | 接続形態 | 難易度 | おすすめ用途 |
---|---|---|---|---|
UART | 非同期・1対1 | TX/RX | ★☆☆ | GPS, Bluetooth |
USB | 非同期・ホスト型 | D+/D− | ★★☆ | PCとの通信 |
I2C | 同期・バス型 | SCL/SDA | ★★☆ | センサ類多数 |
SPI | 同期・高速・全二重 | MOSI/MISO/SCLK/CS | ★★★ | 高速通信 |

音楽家:朝比奈幸太郎
神戸生まれ。2025 年、40 年近く住んだ神戸を離れ北海道・十勝へ移住。
録音エンジニア五島昭彦氏より金田式バランス電流伝送 DC 録音技術を承継し、
ヴィンテージ機材で高品位録音を実践。
ヒーリング音響ブランド「Curanz Sounds」でソルフェジオ周波数音源を配信。
“音の文化を未来へ”届ける活動を展開中。