世界各国の衛星測位システム徹底解説|GPS・GLONASS・Galileo・BeiDou・QZSSの違い

よく耳にするGNSS、そもそもGNSSとはなんでしょうか?

GNSS(Global Navigation Satellite System)は、地球全体をカバーする衛星測位システムの総称です。
かつては「GPS=すべて」と思われていましたが、現在は世界各国が独自のGNSSを構築・運用しています。

まずは世界の国々が運用するGNSSについて表形式でざっくりみていきましょう。
日本ではニュースにもなっているみちびきですね!

名称 運用国・地域 正式名称 衛星数(稼働中) 特徴
GPS アメリカ Global Positioning System 約31機 民生・軍事両用、世界初・最大のGNSS
GLONASS ロシア Global Navigation Satellite System 約24機 寒冷地に強い、旧ソ連由来
Galileo 欧州連合(EU) Galileo Positioning System 約28機 民生専用、高精度が売り
BeiDou 中国 BeiDou Navigation Satellite System 約45機 アジア重視、軍事色が強い
QZSS 日本 Quasi-Zenith Satellite System(みちびき) 4機(2024年以降は7機体制) 日本とアジア太平洋に特化、ビル陰でも強い

🗺️各国GNSSの詳細解説

🇺🇸GPS(アメリカ)

  • 世界で最も広く使われているGNSS
  • 1978年に初打ち上げ、1995年に運用開始
  • 軍用(暗号化Pコード)と民生用(C/Aコード)を併用
  • 2020年代よりGPS Block III世代へ移行中

🧠豆知識: GPSはもともと「戦争で迷わないための地図」だった。湾岸戦争で効果を実証し、世界的に普及。

🇷🇺GLONASS(ロシア)

  • ソ連が開発し、1993年に初期運用開始
  • 冷戦後に一時低迷したが、2000年代に再構築
  • 高緯度(北緯)で精度が出やすい軌道配置が特徴
  • 軍事依存が高く、デュアルユース構造

💡コラム: ロシアではスマホにもGLONASS対応が必須。万が一GPSが使えなくなっても「自前」で測位できるため。

🇪🇺Galileo(EU)

  • 民間主導で開発された唯一のGNSS(完全非軍事)
  • 2016年から初期運用開始、2024年には完全運用へ
  • 通常の無料サービスでGPSより精度が高い(約1m未満)
  • 将来は**災害警報機能(SAR)**なども計画中

💡コラム: iPhoneやPixelは実はGalileoにも対応済。知らずに精度向上の恩恵を受けているユーザーも多い。

🇨🇳BeiDou(中国)

  • 2000年代初期:国内向け(BeiDou-1)でスタート
  • 現在はグローバル運用を達成(BeiDou-3)
  • アジア太平洋地域での精度が非常に高い
  • 中国のスマホはほぼ100%対応(国家方針)

⚠️注意点: BeiDouは暗号通信・自律制御能力が強化されており、他国からは「軍事利用前提では?」と見られることも

🇯🇵QZSS(日本/みちびき)

  • 衛星が日本の「真上付近」に長時間とどまる準天頂軌道(QZO)
  • GPS補完だけでなく、独自の測位・メッセージ送信機能あり
  • 災害時の「災危通報」や、ビル街での測位補助が強力
  • 「L6信号」によるセンチメートル級測位(CMサービス)

🗼豆知識: 「みちびき」は日本語の美しいネーミング。まさに道を“導く”人工衛星として命名されました。

どれを選べばいいの?無料なの?

こんなすごいシステム。
無料で使えるの?と思うかもしれません。

基本的に無料です。

システム料金備考
GPS(米)無料米政府が民間に無償開放。予告なしで仕様変更の可能性あり。
GLONASS(露)無料民生利用は自由。
Galileo(EU)無料Open Service(OS)は誰でも利用可能。高精度サービスは有償の可能性あり。
BeiDou(中)無料基本は無料。ただし詳細仕様は非公開部分もある。
QZSS(日本)無料L1信号や災危通報などは自由。L6など一部高精度信号は登録制。

ただし、使えるGNSSはハードウェア(GNSSチップ)とソフトウェア(設定)によって制限されるという前提があります。

デバイス

実際に使えるGNSSの種類は、ユーザーが選ぶというより「デバイスが対応しているか」によって決まります。

デバイス例使用可能なGNSS備考
iPhone(近年モデル)GPS, GLONASS, Galileo, QZSS, BeiDou自動で最適な組み合わせを選択
u-blox ZED-F9P(産業用)GPS, GLONASS, Galileo, BeiDou, QZSS設定で有効・無効を切り替え可能
格安中華GNSSモジュールGPS + GLONASSのみ対応安価な分、GNSS数が制限される

📌GNSSの将来と融合トレンド

  • マルチGNSS時代:全GNSSの信号を合わせて使うことで、精度・信頼性・可用性が飛躍的に向上
  • L1/L2/L5など複数周波数を受信するデュアルバンド対応端末の増加
  • 衛星測位+地上基準局(RTK, PPP)の組み合わせによるcm級精度の民主化
  • スマホ、ドローン、ロボット、農機、物流、地図、都市インフラまでGNSS依存は加速中

自動運転はもちろん、これからデバイスは自分で移動するようになっていきます。

そうです、人型ロボットですよね。

こうした人型ロボットはAIが搭載されていく未来になりますが、どうしても移動はGPSが必須になってきます。

この地上でのポイントはすべてに数値が決められており、cm級測位ができるようになっている以上、その仕組みを使わない理由は何一つないわけですよね。

これからの時代GPSの知識、技術は必ず役にたつと思います。

だからこそ、今「GNSSの種類と特徴」を正しく知っておくことが、未来のテクノロジーリテラシーにつながるのです。

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朝比奈幸太郎

音楽家:朝比奈幸太郎

神戸生まれ。2025 年、40 年近く住んだ神戸を離れ北海道・十勝へ移住。
録音エンジニア五島昭彦氏より金田式バランス電流伝送 DC 録音技術を承継し、 ヴィンテージ機材で高品位録音を実践。
ヒーリング音響ブランド「Curanz Sounds」でソルフェジオ周波数音源を配信。
“音の文化を未来へ”届ける活動を展開中。