裏切り者の代名詞・・・とまではいかないにせよ、裏切り者!といえば、ユダのイメージが付きまとう世の中ですが、ユダは具体的になにをどう裏切ったのか?
実は知らない人も多いのではないでしょうか?
この記事では「チャコス写本」におけるユダの福音書発見前のキリスト観をシェアしています。
ユダの福音書に関してはこちらの記事を参照してください。
ゲッセマネの園
さて、イエスはローマ帝国への反逆罪で逮捕されます。
ゲッセマネの園という場所。
この場所を密告したのがユダだったというわけです。
伝説によると、銀貨30枚でイエスを売ったというわけなんですね。
イエスは当時指名手配されており、いろいろな場所に弟子たちと雲隠れしていたというわけなんです。
そのため、正確な場所を知るには本人か弟子を取り込むしかないということなんですね。
ちなみにユダはその後後悔し、銀貨を返すように申し出たそうですが、それを受け入れられることはなく自◯したということです。
結果イエスは逮捕され、公開処刑の道を辿るわけです。
なんで裏切ったんだろう?疑問に思いますよね?
実はユダがイエスを裏切った動機については聖書に明確な説明がなく、さまざまな解釈が存在しています。
マルコ福音書では単純に裏切っただけとされています。
ユダはなぜ裏切ったのか?
銀貨30枚というのは、当時でもそこまで多額の報酬ではなかったそうです。
当時の価値観を想像するのは難しいですが、あの時代のお金持ちたちは資産を守るために金庫やら門番やら用意していたくらいですから、少なくとも持ち歩けるほどの枚数というのは、商売人が何かを買い付けに行ける程度、つまり商売をはじめる軍資金くらいの感覚なのではないでしょうか?
100万〜300万くらい?(超感覚的想像です)
おそらく十二使徒として各地を巡っていたわけですから、今更お金・・・というのは考えにくい、やはり思想の違いであると思われます。
当然十二使徒は元々ユダヤ人です。
イエスはメシアとしてこの世に生まれたわけですが、ユダヤ人と対立した一番の理由がメシア感であったことは、分派の歴史でも解説しましたね。
つまりユダヤ人たちはメシアのことを、アレクサンダー大王的な、選民されたはずのユダヤの民以外の人種を滅ぼすほどの力を持った何者かというイメージを持っていたわけです。
ところが待てど暮らせどイエスは愛、そして愛、また愛と伝統的なユダヤ人たちの求めるメシア感と違っていたわけですね。
ユダはもしや、熱心なユダヤ教徒であり、ユダヤ教の宗教指導者たちからその心の隙をつかれたのではないか?と想像するのが自然なのではないか?と筆者は感じます。
ユダは後の世がローマで公認されるようにキリスト支配的になったため描かれた裏切りという視点にすぎず、ユダそのものは愛の教えに魅了された心清らかなユダヤ教徒のような印象を持ちます。
悪魔的な影響?
ルカ福音書では、「サタンがユダに入った」と記述されています。
この記述に基づき、ユダがイエスを裏切ったのは悪魔的な力の影響によるものだとする解釈があるわけです。
これは、ユダが自らの意志というよりも、悪魔の力に操られていたとする神学的な視点です。
それは宗教学を見ると、悪魔が入ったというのは当然のことと言えます。
魔が刺す・・・悪魔も神様も内側に存在するとはイエスも説いていること。
ユダに悪魔が入ったと考えるのはキリスト教視点では当然のことでしょう。
ただし、よく考えてみてください。
ユダヤ教徒からすると、ユダはまさに天使の所業なのであります。
ちなみに福音書によって様々ですが、ヨハネの福音書では、ユダそのものが悪魔だったと記すものもあります。
もう一人の裏切り者
パウロは実は裏切り者であると言えませんか?
キリスト教がたまたま4世紀に世界宗教へのスタートラインに立てたため、後世ではユダが裏切り者であるとされていますが、キリスト教が新興宗教であることを考えると、パウロは伝統的なユダヤ教を裏切ったわけなんです。
項目 | ユダの裏切り | パウロの裏切り |
---|---|---|
人物 | ユダ(イスカリオテのユダ) | パウロ(サウロとしても知られる) |
裏切りの対象 | イエス・キリスト(ユダヤ教の預言者) | ユダヤ教(元々の信仰) |
動機 | 金銭的報酬(銀貨30枚)、その他の不明確な動機 | イエスの復活体験、キリスト教への改宗 |
行動 | 宗教指導者たちにイエスを引き渡す | キリスト教を宣教し、ユダヤ教からキリスト教に改宗 |
直接の結果 | イエスの逮捕と処刑 | キリスト教の急速な拡大 |
長期的影響 | イエスの死と復活、キリスト教の誕生 | ユダヤ人の迫害とディアスポラ(離散) |
ユダヤ人への影響 | 一部ユダヤ人のキリスト教への改宗と分裂 | ユダヤ人のキリスト教徒との対立、長期的な迫害の増加 |
キリスト教への影響 | イエスの死が贖いとされ、キリスト教の中心的教義になる | パウロの宣教活動により、キリスト教がローマ帝国内で拡大 |
その他の影響 | ユダの自殺(マタイ27:3-5) | パウロの手紙が新約聖書の一部となり、キリスト教教義の基盤に |
目で見える言い伝えが真実とは限りません。
パウロは聖書を書いた一人なんです。
元々ユダヤ教として、反逆的な立場のキリスト教徒を見つけては逮捕する立場の人物でした。
時の政権が正義であるとすれば、その反対勢力というのはいつの時代もテロリストですからね。
民衆の盛り上がりを見て、あぁ、これはこっちだ・・・という感覚を持った可能性はあります。
実はイエスのことを一番邪魔だったのは、パウロなのかもしれませんね。
パウロはイエスとは旅をしていませんし、むしろ指名手配して逮捕する側でした。
そのパウロが聖書を書いたりしながら、キリスト教を一番盛り上げたわけです。
キリスト教をヨーロッパで確固たる宗教的地位を築き上げたため、その後、ユダヤ人は全世界で迫害を受けることになったわけですね。
テロリストである(当時の視点)イエスは処刑され、パウロがマーケティング担当にならなければそのまま自然消滅していたかもしれません。
その辺りが実にユダヤ人っぽいというか、勝ち馬に乗る・・・というニュアンスが非常に感じます。
ドラマ『ペーパーハウス』
スペイン発祥のドラマ、ペーパーハウスが非常にこのあたりのストーリーを関連させているような気がしてなりません。
もちろん脚本、製作陣にキリスト教が入っているのは自然なことでしょう。
原題はcasa de papel
スペイン政府と教授率いる強盗集団との攻防をドラマチックにお届けしてくれているわけですが、面白いのが民衆たちは強盗集団の味方なんですね。
政府側のやり方を次々と暴露しながら民衆をうまく味方につけていきます。
ネタバレになりたくないほど面白いドラマなので是非Netflixで見てほしいんですが、最終的に政府側の人も強盗集団に加入することになっていくわけです。
教授=イエスですね。
弟子たちの中でも特に教授に心酔していくのは、元々政府側だった人。
つまり、パウロですね。
最後の最後で最高に愉快なのが、リーダーである教授は「何か特別な思想、革命思想を持っている・・・」とほのめかしておいて、(いや、教授はそんなことをほのめかしたことは実際一度もない)「ん?え?俺はただの強盗だけど?だからずっといってんじゃん、金が欲しいって」と仲間でさえも、唖然とするシーン。
スペインらしいユーモア溢れるシーンであると感じます。
おそらくあのドラマでさえも、仮に教授が捕まって死刑になったとすると、味方につけた民衆と、マーケティングにたけたチームの仲間とともに、新しい思想集団が立ち上げられていたのかもしれませんね。。。とは製作陣は語りませんが、なんとなく、キリストの誕生秘話との結びつきを感じました。
ジョーク半分にいってしまうと、イエスは結構普通の旅好きのおじさんだったのかもしれません。
日本にも来たという説があるくらいですから。
イエスの旅費は誰が負担した?
最後に豆知識。
イエスが各地に教えを広めるために旅をしましたが、その旅費は当然お布施や寄付によって成り立っていました。
仏教ではやはり執着を断ち切るというところが主な目的ではないかと思います。
イエスの場合は、簡単にまとめると、自発的且つ誰にも言わずに秘密に資産を出せば神の恵みと祝福が受けられる。
と教えています。
- 謙遜と慈善: 謙遜な心を持ち、自己犠牲的な態度を示すことを奨励。
- 内面的な動機: 善意から、自発的に施しを行うことを奨励。
- 秘密のお布施: できるだけ秘密にし、自己顕示や称賛を求めないようにする。
- 神への信頼: 施しを通じて神の恵みと祝福を得られると教える。