改・Revox B77〜テープスピードを「27cm/s」という特殊速度に調整・改造する実験

テープスピードは通常19cmかハイスピードモデルでの38cmが基本になります。
ただし常識を常に壊してきた金田式DC録音の金田明彦氏によれば、27cmの可能性というものが記されています。

これは、時空を超えた音楽再現『オーディオDCアンプシステム』(下巻)の第8章オープン録音アンプに記されています。

これは非常に興味深いというわけで、早速B77にて速度27cmに合わせてやってみましょう。

Revox B77 速度/周期 計算機

※半角数字で入力してください (基準: 38cm/s = 625μs)

計算中…

基準となる数値

B77のキャプスタンモーター制御は、モーターの回転をタコヘッドで検出し、その周波数を基準信号と比較することで速度を一定に保っています。

38cm/s(15ips)のハイスピード設定におけるメーカー基準値は以下の通りです。

  • 測定ポイント:キャプスタンモーター基板 チェックポイントA(またはタコヘッド信号入力部)
  • 波形:正弦波(サイン波)
  • 基準周期(T):625 μs (周波数換算で1600Hz)

27cm/sにするための計算

テープスピードとタコメーターの信号周期(時間)は反比例の関係にあります。

速度を落とせば、モーターの回転は遅くなり、1周期にかかる時間は長くなります。

これはもちろん他の速さにする際にも冒頭の計算プログラムを使ってください。

38cm/sから27cm/sへ速度を落とす場合のターゲット周期 

TtargetTtarget

 は、以下の計算式で導き出せます。

【計算式】
ターゲット周期 = 基準周期 × (基準速度 ÷ 目標速度)

【数値を代入】
Target_T = 625μs × (38cm/s ÷ 27cm/s)
Target_T = 625 × 1.4074...
Target_T ≒ 879.63 μs

つまり、オシロスコープ上の読み値で 約 880 μs を狙えば、理論上27cm/sの速度が得られることになります。

実践:どうやって合わせるか?

計算上は「880μs」というターゲットが出ましたが、ここで一つ壁があります。
「B77の標準調整範囲で、速度を30%も落とせるのか?」 という問題です。

結論から言うと、標準回路のままでは可変範囲が足りない可能性が高いです。

ここで、半固定トリマーの抵抗値を変えるという方法でアプローチしてみましょう。
オリジナルは10kΩを使っていますが、交換後のトリマーは、20kΩ(または22kΩ/25kΩ) のものにしてみます。

その理由(計算の根拠)

1. 必要な抵抗倍率
スピードを38cm/sから27cm/sに落とすには、抵抗値を約 1.4倍 に増やす必要があります。

2. 現状のシミュレーション
仮に、基板上の固定抵抗が 4.7kΩ4.7kΩで、現在のトリマー(10kΩ10kΩ)を中間の 5kΩ5kΩ くらいで使って38cm/sが出ていると仮定します。

  • 現在の合計抵抗値 ≈9.7kΩ≈9.7kΩ (4.7k+5k4.7k+5k)

ここから27cm/sにする(1.4倍にする)には:

  • 目標の合計抵抗値 ≈13.6kΩ≈13.6kΩ (9.7k×1.49.7k×1.4)

なぜ20kΩなのか?

13.6kΩ13.6kΩを作るために、固定抵抗(
  • トリマーに必要な抵抗値 =13.6k−4.7k=8.9kΩ=13.6k−4.7k=8.9kΩ

元の 10kΩ10kΩのトリマーでもギリギリ届くように見えますが、以下のリスクがあります。

  • もし現在の設定がもっと高い抵抗値を使っていたら、10kでは足りなくなる(振り切れる)。
  • トリマーの端の方(最大値付近)を使うと、温度変化などで不安定になりやすい。

20kΩのトリマー に交換すれば:

  • 可変範囲が 0∼20kΩ0∼20kΩ に広がる。
  • 必要な 8.9kΩ8.9kΩ 付近は、ちょうどトリマーの 中央付近 になり、調整が一番しやすく安定するエリアを使える。
  • 交換推奨: 20kΩ 以上
  • タイプ: 21回転(多回転)型

部品を注文される際は、「20kΩ 21回転 サーメットトリマー」(コパル製やBourns製など)で探してみてください。

筆者も実験後再度追記していきます。

まとめ

Revox B77で27cm/sという大幅な速度変更を行う場合、以下の2点が重要です。

標準のトリマーでは範囲外になるため、抵抗値の大きい多回転トリマーへの交換が必須。

ターゲット周期は 約880μs を狙う。

Revox B77の速度制御はアナログサーボ方式であるため、計算上の周期時間をオシロスコープで合わせることで、任意のテープスピードを作り出すことが可能です。

今回は「27cm/sなら880μs」という計算結果になりましたが、他の速度にしたい場合も上記のコードブロック内の式に当てはめれば算出可能です。

特殊なテープのアーカイブ再生や、実験的な録音を行う際の参考にしてください。