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「波形を見る」から「波形を操る」へ。
今回は、信号発生器(ファンクション・ジェネレーター)を使って、オシロスコープの本当の使い方を体に叩き込みます。
Revox B77の調整では、テープ速度(周波数)や出力レベル(電圧)を合わせる作業が必要です。
その予行演習として、今日は「1kHz(1キロヘルツ)の正弦波」を完璧に表示させてみましょう。
準備するもの
- オシロスコープ: OWON SDS1104
- ジェネレーター: DACATRON 8202
- 接続ケーブル:
- パターンA:BNCケーブル(両端が回してロックする金具のケーブル)
- パターンB:ジェネレーターのワニ口クリップ + オシロスコープのプローブ
- ※今回は、最も汎用的な「パターンB(クリップとプローブを繋ぐ)」で解説します。

手順1:【実践ガイド】接続と設定の手順

写真の機種(DAGATRON 8202)に合わせて、手順をより具体的にしました。
ステップ1:ケーブルを「下」に繋ぐ
- ジェネレーター右下の「OUTPUT 50Ω」と書かれた端子(他の機器でも同類のOUTがあるはず)に、ケーブル(またはクリップ)を接続してください。
- ※上の TTL/CMOS には危険はありませんが何も繋がないでください。
- ケーブルの先(赤と黒のクリップ)を、オシロスコープのプローブ(フックとワニ口)に接続します。
ステップ2:ボタンとツマミ
写真のパネル配置に従って、左から順に設定しましょう。
- 周波数レンジ(FREQUENCY RANGE):
- 左下のボタン群です。
- 今回はテストとして「1k」のボタンを押し込んでください。
- 周波数ダイヤル(FREQUENCY):
- 左上の大きなディスプレイの下にある大きなツマミは今回使いません(この機種はデジタル表示のようですね)。
- 一番左の大きなツマミFREQUENCYを回して、上の赤い数字が「1.000」(またはそれに近い数字)になるように合わせます。
- 波形選択(FUNCTION):
- 真ん中下のボタン群です。
- 一番左の「〜(正弦波マーク)」のボタンを押し込んでください。(別にどれでも構いません)
- 音量調整(AMPL):
- 右側の出力端子(OUTPUT 50Ω)の少し左上にある小さなツマミがAMPL(振幅)です。
- これを真ん中(12時の方向くらい)に合わせておきましょう。
- ※これが「音の大きさ」を決める最重要ツマミです。
- DCオフセット(DC OFFSET):
- 真ん中あたりのPUSH/PULLと書かれたツマミです。
- これは「押し込まれた状態(PUSH)」にしておいてください。引くと波形が上下にズレてしまいます。
これで、「下の端子」から「1kHzのきれいな正弦波」が出力される準備が整いました。
この状態でオシロスコープの「Auto Set」を押せば、必ず波形が表示されます。
もし表示がおかしい場合は、もう一度「上の端子に刺さっていないか?」を確認してみてください。
手順2:実際に接続
- オシロスコープ側:
- CH1にプローブを接続します。
- プローブのスイッチは「×10」になっていることを確認してください(重要!)。
- ジェネレーター側:
- 「OUTPUT(出力)」端子にケーブルを繋ぎます(通常、赤と黒のクリップが出ているはずです)。
- 結合(ここが重要):
- 赤(信号)同士: ジェネレーターの「赤クリップ」を、プローブの「先端フック」で掴みます。
- 黒(グランド)同士: ジェネレーターの「黒クリップ」を、プローブの「黒いワニ口クリップ」で挟みます。
この状態で(後述します)オシロスコープの「Auto Set」を押せば、必ず波形が表示されます。
もし表示がおかしい場合は、もう一度「上の端子に刺さっていないか?」を確認してみてください。
【チェックポイント】
- 赤と黒が触れ合っていませんか?(ショートしていないか確認)
- 確実に噛み合っていますか?
手順3:オシロスコープで波形を捕まえる
いよいよOWON SDS1104の出番です。
- 電源ON: オシロスコープの電源を入れます。
- 必殺ボタン「Auto Set」:
- 画面右上の「Auto Set」(またはAuto)ボタンを1回押します。
- 「カチカチ」と音がして、画面に「うねうねした波(正弦波)」が表示されましたか?
もし表示されない場合:
- ジェネレーターの「出力レベル(AMPLITUDE)」をもう少し右(最大)に回して、もう一度Auto Setを押してください。
- プローブの「×10」設定と、オシロ画面上の設定が合っているか確認します(CH1メニューでProbeを10Xにする)。
手順4:波形を「読む」ための数値表示

波形が出たら、今「何ボルトで」「何ヘルツなのか」を数字で出しましょう。
これが例えばB77の調整で最も使います。
- 画面下の「Measure(メジャー)」ボタンを押します。
- 画面メニューから「Add(追加)」を選びます。
- 以下の2つを選択して画面に追加してください。
- Frequency(周波数): 「1.000kHz」付近になっていますか?
- Vpp(ピーク・ツー・ピーク電圧): 波の一番上から一番下までの電圧差です。
これで、ジェネレーターのダイヤルを回すと、オシロスコープの数字(周波数)がリアルタイムで変わるのが確認できるはずです。
「ダイヤルを回す→波が縮む→数字が変わる」この連動感を味わってください。
手順5:【最重要】3つのツマミをマスターする
Auto Setに頼らず、自分で波形を見やすく調整します。
これを覚えないと、ノイズ混じりのB77の信号は捕まえられません。
① 縦の拡大縮小(電圧軸)
- 操作: CH1の「VOLTS/DIV」(大きなツマミ)を回します。
- 変化:
- 左に回す: 波が低く(小さく)なります(5V/divなど)。全体を見たい時。
- 右に回す: 波が**高く(大きく)なります(100mV/divなど)。詳細を見たい時。
- 実践: 波の高さが、画面の縦枠の8割くらいになるように調整してください。一番見やすいサイズです。
② 横の拡大縮小(時間軸)
- 操作: Horizontalエリアの**「SEC/DIV」(大きなツマミ)を回します。
- 変化:
- 左に回す: 波がギュッと詰まり、たくさん表示されます。
- 右に回す: 波が横に伸び、一つだけ大きく表示されます。
- 実践: 画面の中に、波の山が「2つ〜3つ」入るくらいに調整してください。これが調整作業の基本ポジションです。
③ 波を止める(トリガー)
- 現象: 画面の波形が、左右に流れてチラついていませんか?
- 操作: Triggerエリアの「LEVEL」ツマミをゆっくり回してください。
- 画面注目: 画面右端に、小さな「矢印(Tマーク)」が上下するのが見えますか?
- 解決: この矢印を、波形の「山と谷の間(波が存在する高さ)」に入れてください。
- 矢印が波の外にある → 波形は流れてしまいます(トリガーがかからない)。
- 矢印が波の中にある → 波形がピタッ!と止まります(トリガー成功)。
理屈: 「電圧がこの高さ(矢印)を通過した瞬間に写真を撮れ!」と命令しているのです。
中級編のゴール:この操作ができれば合格
以下のミッションを自分でやってみてください。
- ジェネレーターの周波数ダイヤルを回して、数値を「500Hz(0.5kHz)」に変える。
- オシロスコープの波形が横に間延びするので、「SEC/DIV」を左に回して、見やすく(山が2〜3個に)調整する。
- ジェネレーターのレベル(音量)を小さくする。
- オシロスコープの波形が低くなるので、「VOLTS/DIV」を右に回して、見やすく拡大する。
- 最後に「Trigger LEVEL」を微調整して、波形をピタッと止める。
これがスムーズにできれば、あなたはもうオシロスコープ初心者ではありません。
Revox B77の内部基板から出ている信号を、「探し出し、拡大し、止めて見る」準備が完全に整いました。