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こんにちは。朝比奈幸太郎です。
音楽家として生きていると、日々、無数の「旋律の断片」が頭をよぎります。
あるいは、ふと読んだ本の美しい一節、深夜に思いついた哲学的な問い、明日買うべき野菜のリスト?……。
かつて私は、それらを必死に記憶しようとしたり、あちこちのノートアプリに書き散らしては紛失していました。
しかし、Obsidian(オブシディアン)に出会ってから、私の脳内は静寂と秩序を取り戻しました。
あなたがここに来たということは、「Obsidianって何?」「どう使うのが正解なの?」という疑問をお持ちだと思います。
今日は、この少し特殊で、しかし一度ハマると抜け出せない「第二の脳」について、その哲学から具体的な使い方まで、すべてをお話しします。
1. そもそもObsidianとは何か?:ローカルファーストの哲学
まず、最も重要な誤解を解きましょう。
Obsidianは、EvernoteやNotionのような「クラウドサービス」ではありません。
Obsidianは、あなたのPCの中にある「ただのテキストファイル」を、美しく表示し、賢くつなげるためのレンズのようなツールです。
Obsidianで書いたデータは、すべてあなたのパソコン上のフォルダ(Vaultといいます)の中に、.md という拡張子の「Markdownファイル」として保存されます。
つまり、こういうことです。
もし明日、Obsidianを開発している会社が倒産しても、あるいはあなたのPCが爆発して壊れても、そのフォルダ(Vault)のバックアップさえあれば、あなたの知的財産は1ミリも傷つきません。
新しいPCを買い、Obsidianをインストールし、バックアップしておいたフォルダを「読み込む」。
たったこれだけで、プラグインの設定から画面のレイアウト、書き溜めた数千のノートまで、完全に元の環境が再現されます。
これが「ローカルファースト」の強みです。あなたの思考は、誰かのサーバーの人質にはなりません。
notionはサーバーがダウンすればそれで終わりです。
永遠にあなたの知的財産かどうか?がnotionとの分かれ目になります。
2. オープンソースではないが、オープンである理由
「じゃあ、Obsidianはオープンソース(誰でも中身を改造できるソフト)なの?」と聞かれることがあります。
厳密には、Noです。
Obsidianのアプリケーション本体は企業が開発しているクローズドなソフトウェアです。
しかし、多くのエンジニアやギークたちがObsidianを信頼しているのは、「データ形式が徹底的にオープンだから」です。
Markdown(マークダウン)という形式は、ただの文字データです。
Windowsの「メモ帳」でも、Macの「テキストエディット」でも、プログラマーが使う「VS Code」でも開くことができます。
Obsidianがなくなっても、他のソフトへ一瞬で移行できるというわけです。
「アプリという『ガワ』は企業が作るが、中身の『データ』は100%ユーザーが支配する」
この誠実な姿勢こそが、Obsidianが愛される理由なのです。
もちろん、個人利用であればずっと無料で使えます。
3. Notionとの決定的な違い:建築家と庭師
よく比較される「Notion」との違いを、私はこう定義しています。
- Notionは「建築家」のためのツール
- Obsidianは「庭師」のためのツール
Notionのアプローチ
Notionは、最初に「箱」を作ります。
「プロジェクト一覧」「読書リスト」といったデータベースを作り、そこに情報を整理整頓して入れていきます。
チームでの共有や、綺麗なWebサイトのようなページを作るのには最強です。
しかし、構造が決まっている分、そこから外れた「雑多な思いつき」の置き場所に困ることがあります。
Obsidianのアプローチ
Obsidianは逆です。
まずは何も考えず、小さなメモ(ノート)を書きます。
そして、それらを事後的に「リンク」で繋いでいきます。
フォルダ分けなんて適当で構いません。
雑草のように生えてきたアイデア同士が絡み合い、やがて予期せぬ「知の森」が育っていく。それがObsidianです。
4. Obsidianの真骨頂:リンクとグラフビュー
では、具体的な使い方に入りましょう。
Obsidianで覚えるべき機能は、実はたった一つです。
[[リンク]] こそが命
ノートを書いている途中で、[[(角括弧を2回)と入力してみてください。
すると、既存のノートのリストが出てきます。選べばリンクの完成です。
もし存在しないノート名を入力すれば、クリックした瞬間にその名前で新規ノートが作成されます。
例えば、私が「作曲のアイデア」というノートを書いているとします。
今日のメロディは少し [[ジャズ]] っぽい響きだった。
これ、以前考えた [[雨の日のコード進行]] と合うかもしれない。
こう書いておけば、後でクリック一つで「ジャズ」のノートや「雨の日のコード進行」のノートに飛べます。
これを繰り返すと、あなたの脳内の連想ゲームがそのままPCの中に再現されていきます。
脳を可視化する「グラフビュー」
ノートが増えてきたら、「グラフビュー」ボタンを押してみてください。
あなたが作ったリンクが、まるで星座のように繋がって表示されます。
「最近、この分野の思考が活発だな」「このアイデアとこのアイデアは、意外なところで繋がっていたな」という発見が視覚的に得られます。
5. 朝比奈流:Obsidianの具体的な活用アイデア
音楽家である私が、実際にどのように使っているか。
その一部を共有しましょう。
あなたの職業や趣味に置き換えてみてください。
① デイリーノート(日誌)を母艦にする
Obsidianには「今日のノート」を一発で作るボタンがあります。
私は朝起きたらまずこれを押し、その日のタスク、浮かんだフレーズ、食べたもの、すべてをそこに書きます。
重要なキーワードが出てきたら [[ ]] でリンク化します。
活用例: 「今日の会議で [[プロジェクトA]] の話が出た」と書けば、後で [[プロジェクトA]] のページを見た時に、「〇月〇日の日誌で言及あり」と自動的にバックリンク(逆リンク)が表示されます。これで情報は迷子になりません。
② Zettelkasten(ツェッテルカステン)的な学習
難しい本を読む時、1冊で1つのノートにするのではなく、「1つの概念につき1つのノート」を作ります。
- [[相対性理論]]
- [[時間の遅れ]]
- [[光速度不変]]
このように細かくノートを分け、それぞれをリンクで繋ぎます。
すると、別の本で「時間」について学んだ時、既存の [[時間の遅れ]] ノートに追記したりリンクしたりでき、知識が雪だるま式に統合されていきます。
③ 創作のネタ帳として
歌詞のフレーズ、小説のプロット、デザインのアイデア。これらはフォルダに分類するのが難しいものです。
Obsidianなら、とりあえず #アイデア というタグをつけて放り込んでおけばOK。
後で検索したり、ランダムにノートを表示させる機能を使って、過去の自分からインスピレーションを受けることができます。
6. 最初のステップ:まずはこう始めよう
Obsidianはカスタマイズ性が高く、何百もの「プラグイン」を入れることができますが、最初は絶対にバニラ(素の状態)で使ってください。
- PCに「Obsidian Vault」というフォルダを作る。(場所はドキュメントフォルダでも、Dropbox内でもOKです)
- Obsidianを起動し、そのフォルダを指定する。
- 「Cmd/Ctrl + N」で新規ノートを作り、とにかく書く。
- キーワードを
[[ ]]で囲ってみる。
これだけです。
フォルダ整理に凝る必要はありません。
リンクさえあれば、情報は必ず見つかります。
おわりに:あなたのための宇宙を
Obsidianは、使い込むほどにあなたの思考の癖を学習したかのような、唯一無二のパートナーになります。
PCを買い替えても、OSが変わっても、ネットワークが遮断された無人島に行っても、あなたの思考(テキストファイル)はあなたの手元に残り続けます。
デジタルな宇宙に、あなただけの星空(グラフビュー)を描いてみてください。
それでは、良き知的生産の旅を。
朝比奈幸太郎
おまけ:Notionから移行する人が感じる「3つの解放」
もしあなたが今、Notionを使っていて「少し疲れ」を感じているなら、Obsidianへの移行は単なるソフトの乗り換え以上の意味を持ちます。
私自身、かつてはNotionですべてを管理しようとしていました。
しかしObsidianに移った瞬間、重たいコートを脱ぎ捨てたような感覚を覚えました。
具体的に何が変わるのか、移行のメリットをお伝えします。
1. 「待たされる時間」からの解放(爆速のレスポンス)
Notionは素晴らしいツールですが、クラウドベースである以上、ページの切り替えや検索に「ほんの数ミリ秒」の読み込み時間が発生します。
しかし、思考のスピードにおいて、この数ミリ秒は致命的です。
Obsidianはローカルファイルを開くだけなので、すべての動作が「瞬時」です。
キーを叩いた瞬間、文字が刻まれる。
検索した瞬間、結果が出る。
この「思考と入力の時差ゼロ」の快感を知ってしまうと、もうWebベースのツールには戻れません。
2. 「オフライン不安」からの解放
飛行機の中、山奥のロッジ、あるいはカフェのWi-Fiが不安定な時。
Notionだと「データが見られないかも」「同期ズレが起きるかも」という不安がつきまといます。
Obsidianなら、ネット環境は一切関係ありません。
あなたのPCさえあれば、そこが書斎です。
どんな場所でも、どんな状況でも、あなたの知的な活動が妨げられることはありません。
3. 「装飾疲れ」からの解放
Notionは機能が豊富すぎるゆえに、ついつい「アイコンの設定」や「データベースのプロパティ調整」「カラムのレイアウト」に時間を費やしてしまいがちです。
これを私は「ドールハウス作り」と呼んでいます。
Obsidianは、初期状態では真っ白なエディタです。
まずは書くことしかできません。
だからこそ、「見た目を整える時間」が減り、「中身を考える時間」が圧倒的に増えます。
結果として、知的生産の質が向上するのです。
Notionで作り込んだデータベースをすべて移行する必要はありません。
まずは「テキストベースの思考メモ」だけをObsidianに移してみてください。
その軽快さに驚くはずです。