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試してみたいスピーカーユニットが決まったら、次はいよいよ「家」となるエンクロージャー(箱)の設計です。
このページは、特定の型番に限らず、「密閉型フルレンジスピーカー」を作ろうとする全ての自作派のための設計マニュアルです。
8cm、10cm、12cm… サイズが変わっても、音響学的な物理法則は変わりません。
「計算機」(※ページ下部に実装予定)に入力する前に、まずはその裏側にある理論、特に「奥行き」や「板厚」が音に与える影響を理解しておきましょう。
賛否ある世界
オーディオの世界は賛否ある世界。
誰もがベストだと思うものは一つとして存在していません。
最後は自分の耳で聞いて、自分の信じる音を探す旅を続けるしかないわけです。
この記事でのガイドを出発点として、音探しの旅にいってらっしゃい!
1. 容積計算の基礎:外寸と内寸の罠
初心者が最初に陥るミスが、「外側のサイズ」で容積を計算してしまうことです。
密閉型において重要なのは、「ユニットの背面にどれだけの空気が存在するか(空気バネの強さ)」です。
つまり、板の厚みを引いた「内寸」での計算が必須です。
厚みに関しては後述します。
▼ 密閉型エンクロージャー容積計算式
特に、筆者が推奨しているロシアンバーチ(後述します)のような高級合板を使用する場合、板厚は15mm(1.5cm)や18mm(1.8cm)といった厚いものを使います。
この厚みが、容積に大きく影響します。
2. 実践ケーススタディ:たとえば12cmフルレンジのサイズ
ここで、実際に密閉型愛好家(筆者)が使用している12cmフルレンジ用エンクロージャーを例に計算してみましょう。
このサイズ感は、デスクトップからリビングまで使える絶妙なバランスです。
【スペック】
- 素材:ロシアンバーチ合板(推測板厚:15mm)
- 外寸:幅180mm × 高さ280mm × 奥行230mm
ステップ1:内寸を出す
板厚が15mmの場合、左右・上下・前後でそれぞれ2枚分の厚み(30mm=3cm)を引きます。
- 内寸幅:
18−3=15cm18−3=15cm - 内寸高:
28−3=25cm28−3=25cm - 内寸奥:
23−3=20cm23−3=20cm
ステップ2:容積を計算する
🛠 密閉箱・容積シミュレーター
板厚を考慮した正確な実効容積を計算します。
音響分析:この7.5Lは適正か?
ここが設計の分かれ道です。
音響工学の教科書的なセオリー(低音をフラットに出すための基準 )
Qtc=0.707Qtc=0.707
に照らし合わせると、一般的な12cmユニットに対して7.5Lは「少々小さすぎる(容積不足)」という判定になります。
通常は10L〜12L程度確保するのがセオリーだからです。
しかし、あえてこのサイズにする設計意図が存在します。
それは「過渡特性(トランジェント)の優先」です。
- 一般的な設計(10L〜15L):
空気バネが柔らかいため、低音の量感は出ますが、ユニットの制動が緩くなり、音が少し「遅れる」傾向が出ます。 - 今回の設計(7.5L):
空気バネをカンカンに効かせる「高制動」な設計です。
物理的なメリット:コーン紙がピタリと止まるため、音の立ち上がり・立ち下がりが爆速になります。
物理的なデメリット:100Hz以下の重低音は物理的に出にくくなります(ダラ下がりの特性)。
つまり、この7.5Lという数値は、低音の「量」を捨てて、中高域の「質感とスピード」に全振りした、極めて「通(ツウ)」なモニタースピーカー的設計と言えます。
FostexのFEシリーズのような強力な磁気回路を持つユニットの場合、このタイトな箱に入れることで、その反応速度を極限まで引き出すことができるのです。
この少し小さめの設計のおかげで、12cm7.5LのFEユニットとスーパーツイーターで金田式バランス電流伝送DCアナログ録音されたものを、そのままB77でアナログ再生したときの破壊力は、とてもじゃないですが、文字にできないほど。
その電流感はスピード感に換算され、音の粒が次々と立ち上がり、湧き上がり、高速度で浴びる・・・という感覚になります。
これはオーディオのすべてに関して言えることですが、決して常識を鵜呑みにしないことです。
でも非常識を探せと言っているのと同義ではありません。
いい音、目指す音がそこにあるなら常識を無視してもいいということです。
3. 「奥行き」の論点:深いほうがいいのか?
設計時によくある質問が、「容積を稼ぐために、奥行きを長くしてもいいですか?」というものです。
音響学的な答えは、「定在波のリスクが高まるため、限度がある」です。
奥行きと定在波(Standing Wave)
箱の中では、向かい合う壁の間で音が反射し、特定の周波数が強調される「定在波」が発生します。
奥行きを極端に長くすると、箱が「管(パイプ)」のような形状に近づき、「気柱共鳴」というボーッとした癖のある響きが発生しやすくなります。
黄金比率の考え方
定在波を分散させるための鉄則は、「幅・高さ・奥行き」を単純な整数倍にしないことです。
先ほどの12cm用の実例(内寸 15cm : 25cm : 20cm)を見てみましょう。
比率に直すと 3 : 5 : 4 です。
これは整数倍(1:2など)になっておらず、非常に理想的な分散比率です。
「容積が足りないから奥行きを2倍にする」というのは音響的には常識ではありません。
容積を増やしたい場合は、幅・高さ・奥行きを全体的に拡大し、比率を維持するのが常識です。
4. ユニットサイズ別:設計の目安(クイックリファレンス)
これから設計する方のために、狙いたい音の傾向に合わせた推奨容積の目安を記します。(板厚15mm以上できれば18mm推奨)
この表は、「A:スピード・質感重視(密閉派推奨)」と「B:バランス・量感重視(標準)」に分けています。
| ユニット口径 | A:スピード重視 (推奨) | B:バランス重視 (標準) | 解説 |
| 8cm | 3.5L 〜 4.5L | 5.0L 〜 6.0L | Aはボーカル定位が抜群。Bは低域が少し出るが輪郭が甘くなる可能性あり。 |
| 10cm | 5.0L 〜 7.0L | 8.0L 〜 10L | 10cmはバランスが良いが、密閉ならA設定でニアフィールドがおすすめ。 |
| 12cm | 7.5L 〜 9.0L | 10L 〜 14L | Aは低音不足を感じるかもしれないが、解像度は最強。Bはリラックスして聴ける音。 |
| 16cm | 15L 〜 18L | 20L 〜 25L | 16cmあれば密閉でも十分な低音が出る。A設定で締まりのある低音を狙うのが吉。 |
※Fostex FEシリーズを密閉で使う場合、基本的に「A」の範囲を推奨します。
スーパーツイーターやサブウーファーと組み合わせる前提なら、迷わず「A」を選んでください。
📐 黄金比エンクロージャー生成
ユニットサイズを選択してください。
定在波を分散させる「3:5:4」比率の設計図を自動算出します。
- 内寸比率は音響的に優れた 3 : 5 : 4 を維持しています。
- 木材カット時は上記の「外寸」を指定してください。
- 16cm以上のユニットを使用する場合は、板厚18mmに加え、内部に補強桟を入れることを強く推奨します。
30cm以上の大型ユニットのエンクロージャー設計は、設置する場所の音響特性などを考慮しながら専門の設計士とともに計算することを推奨します。
工具・部材選び方
設計のイメージができたら、次に道具を揃えましょう。
世の中では「弘法筆を選ばず」と言いますが、オーディオ自作においてそれは間違いです。筆(工具・部材)の質が、そのまま音の純度に直結します。
弘法は筆選びも一流と覚えておきましょう。
特に自作オーディオの場合は、「最高級の食材」を扱うわけですから、調理器具にも相応のこだわりが必要です。
音響(電気)系と木工系に分けて、必須アイテムとその役割を解説します。
① スピーカーケーブル(内部配線用)
エンクロージャーの中を這わせる電線です。
「たかが数十センチ」ではありません。「されど数十センチ」です。
信号の通り道において、最もボトルネックになりやすい部分です。
私の学んできた金田式では、DAIEI電線というものを一択で推奨しています。
これは若松通商でしか購入できませんでしたが、近年DAIEI電線もものが少なくなり、現在若松通商ではTANAKA電線が混じっています。
そして、このDAIEI電線の一番守らなければいけないポイントが、DからIへ。
必ず音の通る方向を間違えないようにしてください。
Dが音の通る方、Iが音が到達する方向です。
故に、ユニットにはんだする際は、I側を接続することになります。
可能であればあなたのオーディオ環境はすべてDAIEI電線で統一するべきです。
また、近年混じっているTANAKA電線も音はそこまで悪くなることはありません。
② オーディオ用ハンダ
「ハンダなんて付けば何でもいい」と思っていませんか?
一般的な電子工作用ハンダと、オーディオグレードのハンダでは、音の「抜け」が全く違います。
オーディオの世界では、銀(Silver)」を含んだ銀入りハンダが常識です。
ですが、常識は疑ってください。
銀入りハンダはそんなに音がよくありません。
特にこだわりがない場合は、必ず千住金属のはんだにしてください。
③ ハンダごて & こて台
オーディオ用ケーブルやターミナルは、熱容量が大きいです。
100円ショップの安価なハンダごて(20W〜30W)では、温度が上がらず、ハンダがボソボソになる「イモハンダ」の原因になります。
さて、筆者にもオーディオを教えてくれた師匠がいるわけですが、その師匠からハンダゴテに関していわれていたことがあります。
それが、アンテックス以外を使うならもう最初からやめておきなさい。
ということ。
それくらいアンテックスのハンダゴテは格が違います。
スピーカーを自作しようと思う方は、これからもハンダを多用することになるかと思いますので、最高のアンテックスのものを揃えてください。
ANTEX社は1950年代から60年以上にわたり小型でパワフルなハンダゴテを製造し続けています。
英国の本社工場で今も変わらず製造を続ける職人魂の込められたハンダゴテは本当に一味も二味も違うんです。
筆者は25W
と、15W
とを使い分けていますが、まずは25W一本でOKです。
これでほとんどのことは足ります。
トキワエレネットで購入できます。
アンテックスはオンオフスイッチさえ付いておらず、Amazonで安くてオンオフスイッチがついて、温度計や温度調整までついたものがあって、そちらにしたいのはわかりますが、アンテックスにしてください。
④ スピーカーターミナル
スピーカー背面に付ける、アンプからのケーブルを繋ぐ入力端子です。
これはユニットを取り扱っているコイズミ無線などで購入できますが、個人的には、スピーカーケーブルが出るだけの小さい穴を開けて、直接引き出すのが理想で、筆者もFE12cmそういうスタイルにしています。
実際オーディオの世界では接点はわずか一つでも少ない方が音の純度は上がります。
2. 剛性を生む:木工系ツールと接着剤
次に、ロシアンバーチ等の硬い木材を組み上げ、「完全密閉」を実現するための道具たちです。
ここでの作業精度が、密閉型の命である「空気バネ」の強さを決めます。
⑤ 木工用ボンド(接着剤)
学校工作で使う「白いボンド」だけでは不十分な場合があります。
オーディオ自作では、乾くとカチカチに硬化するタイプが好まれます。
スピーカー制作には、タイトボンドを使用します。
Titebondフランクリン タイトボンド 115mL(4oz)
⑥ クランプ(ハタガネ)
「接着剤を塗って、重しを乗せて放置」では、プロの音は出せません。
強力な圧力をかけて圧着することで、接着層がミクロの薄さになり、木材同士が本当の意味で「一体化」します。
ホームセンターで木工クランプを探してみてください。
クイックバークランプ 六本組 150mm&300mm 木工用 スチール製クランプ
長さを間違えないように。
⑦ 電動ドリルドライバー & ドリル刃
ロシアンバーチは非常に硬い木材です。
下穴(したあな)を開けずにネジをねじ込むと、間違いなくネジが折れるか、板が割れます。
⑧ サンドペーパー(紙やすり) & ハンドサンダー
組み上がった箱の「段差」を消し、手触りを良くするために必須です。
⑨ 【重要な注意】吸音材
密閉箱の中に詰める「詰め物」です。
市販のスピーカーにはこの詰め物が入っており、これを入れることで余計な音を吸収し、クリアな音を出すと一般的には常識的に言われています。
しかし、この吸音材は、金田式の世界では、「吸音楽材」という名前で呼ばれているわけです。
これを入れてしまうと音楽を吸収されてしまいますよ。
好みの問題なので、どうしても入れたい方は入れてもいいと思いますが、本当に圧倒的なクリアな差が感じられるので、できれば吸音楽材ば入れないでください。
準備ができれば、半分は完成したようなもの
これらの道具が手元に揃った時のワクワク感。
これこそがDIYのスタートです。
特に「ハンダごて」と「ボンド」は、完成後の耐久性と音質に直結しますので、少し良いものを選んでおくことを強くおすすめします。
あとは木材です。
基本的にバーチ材を使うので厚みは自由自在。
実際に20mmや22mmなんかの厚みで制作する人もいるほど本当に好みの世界です。
先述した通り、決して厚いからいいとか、大きいからいいとかそういう問題じゃないことをここでもう一度認識しておきましょう。
また、検索してみてほしい点としてダボ加工というものがあります。
エンクロージャーは基本的に制作したら一生物だと思っていいでしょう。
どうしても設計を変えたいとか、音を変えたいとかがない限り、一生かけてエイジングしていくものです。
実際その箱の鳴り方でエイジングが進みます。
ロシアンバーチとラトビアバーチについて
こちらは、ホームセンターで手に入ればいいでしょうし、バーチ材の専門業者がありますので、そちらに依頼してもいいでしょう。
カットしてくれる業者もたくさんありますし、オークションサイトなどで、エンクロージャーの製作者さんが販売していたりします。
近年ロシアンバーチは手に入りにくくなっており、代わりにフィンランドバーチやラトビアバーチなどが流行っています。
ご想像の通り、実際ロシアンバーチンもラトビアバーチもフィンランドバーチも原産地域的には似たようなものですので、日本でいうと、北海道産と東北産くらいの感じでしょう。
音自体もラトビアバーチは聞いたことがありますが、ロシアンバーチとほぼ同じです。
【保存版】木材加工業者への発注メール(10cmアルニコ密閉型)
仮にアルニコFE103A-VB〜フォステックスの10cmを例に業者に依頼を出すサンプルを作成しておきましょう。

件名:
【見積依頼】自作スピーカー用カット・穴あけ加工のお願い(ロシアンバーチ15mm・10cmユニット用)
本文:
〇〇木材 担当者様
初めてご連絡いたします。[あなたの氏名]と申します。
自作スピーカー用エンクロージャーの木材カットおよび穴あけ加工のお見積りをお願いしたくご連絡いたしました。
Fostexの10cmユニットを使用した密閉型スピーカーを製作予定です。
使用部材と加工の詳細は以下の通りです。
1. 使用材料
樹種:ロシアンバーチ合板(在庫がない場合はフィンランドバーチ共芯)
板厚:15mm
数量:ステレオペア(2台分)の製作に必要な分量
2. カット寸法指定(2台分合計の枚数)
仕上がりサイズ:幅170mm × 高さ265mm × 奥行220mm を想定した「イモ継ぎ」構成です。
※木目は全ての部材において「長辺(長いほう)」方向に流れるようにお願いします。
【部材A】フロント・リアバッフル(正面・背面板)
寸法:170mm × 265mm
枚数:4枚
※このうち2枚に「加工指示①」、残り2枚に「加工指示②」をお願いします。
【部材B】サイドパネル(側板)
寸法:190mm × 265mm
枚数:4枚
※奥行220mmから前後の板厚(30mm)を引いた寸法です。
【部材C】トップ・ボトムパネル(天・底板)
寸法:140mm × 190mm
枚数:4枚
※内部に収まる寸法です。
3. 穴あけ加工の指示
【加工指示①:フロントバッフル】(2枚に加工)
10cmフルレンジユニット(Fostex FE103系)取り付け用です。
メイン開口(スピーカー穴)
位置:板の左右センター(85mm)、かつ「上端から105mm」の位置を中心とする
穴径:φ93mm(直径93ミリ)の貫通穴
※図面はφ92mmですが、塗装厚と余裕を見て+1mmのφ93mmでお願いします。
鬼目ナット用下穴(ユニット固定ネジ用)
上記メイン開口の中心から、**直径115mm(P.C.D φ115)**の円周上に4箇所
配置角度:45度(X字状)の対角位置
穴径:φ4.5mm(貫通)
【加工指示②:リアバッフル】(2枚に加工)
スピーカーターミナル取り付け用です。
ターミナル用開口
位置:板の左右センター(85mm)、かつ「下端から70mm」の位置を中心とする
穴径:φ51mm(直径51ミリ)の貫通穴
※使用パーツ:埋め込み径φ50mmに対し、クリアランス確保のためφ51mm指定です。
4. 備考・要望
切断面のバリ処理(軽くサンドペーパー等)をお願いします。
組み立て精度に関わりますので、寸法公差は可能な限り高精度(±0.5mm以内)を希望します。
端材が出る場合は同梱不要です(処分をお願いします)。
5. 添付資料
念のため、ユニットの仕様書画像と、穴あけ位置のラフ図面を添付いたします。
お忙しいところ恐縮ですが、送料(配送先:都道府県〇〇市)を含めたお見積りと、最短の納期をご教示いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
ちなみにスピーカー端子は、こちらのコイズミ無線で最も安いものを例にしています。
ユニット穴の位置について〜真ん中がいいの?上がいいの?
音響学的にも、視覚的にも「少し上に開ける」のがベストです。
先ほどの注文メールの数値(上から105mm)は、すでにその「音響的な黄金比」を計算に入れて設定しています。
1. なぜこの位置が良いのか?
これには「バッフル回折(ディフラクション)」という音響物理現象が深く関わっています。
① 音の「波紋」を散らすため
スピーカーユニットから出た音は、水面に石を投げた時のように放射状に広がります。
その音波がバッフル(正面板)の「端っこ(エッジ)」に到達すると、そこで音が反射・回折し、あたかもエッジから新しい音が出ているような現象が起きます。
- ど真ん中に配置した場合:
ユニットから「上端」「下端」「左端」「右端」までの距離が均等になります。すると、エッジで跳ね返った音波が「全部同時に」ユニットに戻ってきます。これが元の音とぶつかり合い、特定の周波数で強烈なピーク(盛り上がり)とディップ(打ち消し合い)を生み出します。結果、音が暴れて「うるさい音」になります。 - 少し上にずらした場合(オフセット):
上端までの距離と、下端までの距離が変わります。すると、跳ね返ってくる音波のタイミングがズレます。この「ズレ」がピークとディップを分散させ、周波数特性をフラット(平坦)にならすのです。
② 視覚的な「黄金比」
人間の目は、物体が幾何学的な中心にあると、錯覚で「少し下がって(垂れて)」見えます。
これを補正するため、額装やデザインの世界でも、重心を少し上げるのが鉄則です。
スピーカーも同様で、少し上にある方が「座りが良く、高級感」が出ます。
今回の設計値の意図
今回の設計(高さ265mmに対し、上から105mm)は、中心(132.5mm)よりも約27mm上に配置しています。
これは「黄金比(約1 : 1.6)」に近い比率で分割しており、「定在波の分散」と「見た目の美しさ」を両立させたプロの配置です。
注文内容は「ステレオペア」で行う
ご安心ください。
先ほどのメールサンプル文面は、「スピーカー2台分(左右ペア)」が完成する数量になっています。
念のため、内訳を分解して確認しましょう。
【直方体の箱 1つを作るのに必要な板は 6枚】
- 前 1枚、後 1枚、左 1枚、右 1枚、上 1枚、下 1枚 = 計6枚
【今回の注文数(2台分)】
- 部材A(前後):4枚(右前、右後、左前、左後)
- 部材B(左右):4枚(右側面×2、左側面×2)
- 部材C(上下):4枚(右天底×2、左天底×2)
- 合計:12枚
これで間違いなく、左右2台分の密閉型スピーカーが組み上がります。
組み立てのコツとハンダのコツ
最後にはんだのコツを伝授しておきます。
ハンダをつけるコツは、できるだけ接点を広くとること。
面で取るようにしてください。
その方が音がいいです。
組み立ては一生ものの気持ちで丁寧に。
Fostexの10cmユニットを使用した密閉型スピーカー(ステレオペア)です。
組み立て精度を高めるため、**「φ6mm木ダボによる位置決め加工」**をお願いしたく存じます。
1. 使用材料
樹種:ロシアンバーチ合板(またはフィンランドバーチ)
板厚:15mm
数量:2台分
2. 構造とカット寸法(2台分合計)
構造:「フロントバッフル」と「リアバッフル」で、「側板・天板・底板の枠」を前後から挟み込む構造とします。
【A】フロント・リアバッフル(前後)
寸法:170mm × 265mm
枚数:4枚
※木目は長辺方向
【B】サイドパネル(側面)
寸法:190mm × 265mm
枚数:4枚
※奥行220mmから前後の板厚(30mm)を引いた寸法
※木目は長辺方向
【C】トップ・ボトムパネル(天底)
寸法:140mm × 190mm
枚数:4枚
※内部寸法
※木目は140mmの辺に平行(横方向)
3. 加工指示詳細
① スピーカー・ターミナル穴あけ(貫通)
フロントバッフル(2枚):中心(W85, 上から105)にφ93mm開口 + P.C.Dφ115mmにφ4.5mmネジ穴×4(X配置)
リアバッフル(2枚):中心(W85, 下から70)にφ51mm開口
② ダボ穴加工(φ6mm木ダボ用)
組み立て時の位置決め用として、以下の接合面にダボ穴加工をお願いします。
※ダボはお店の標準仕様(φ6mmあるいはφ8mm)に合わせて調整いただいて構いません。
【接合A】フロント/リアパネル(板の裏面) ⇔ サイド/トップ/ボトムパネル(木口)
フロント・リアパネルの裏面外周に、相手材(B・C)の木口を受けるためのダボ穴。
配置目安:各辺に2箇所ずつ(1枚あたり計8箇所程度)。
【接合B】サイドパネル(板の内側面) ⇔ トップ/ボトムパネル(木口)
「ロ」の字型の枠を作るための接合部。
配置目安:各接合部に2箇所ずつ。
※詳細なダボ配置位置については、強度と加工性を考慮し、貴店の標準的な設計にお任せいたします。
4. 付属品
加工に適合するサイズの「木ダボ(必要数+予備)」も合わせてお見積りください。
5. 添付資料
スピーカーユニットの仕様書、および全体のイメージ図を添付します。
以上、高精度な加工が必要となり恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
ダボ加工の穴自体は、実際に使うダボ商品をリンクするとよりわかりやすいと思います。