Contents
Rustの所有権と借用を理解した次のステップは「ライフタイム(lifetime)」の概念です。
ライフタイムは、参照が有効な期間を示すもので、Rustがメモリ安全性を保証するために重要な役割を果たします。
ライフタイムを理解することで、参照のスコープに関するコンパイルエラーを回避し、より安全で効率的なコードを書けるようになります。
この記事では、Rustのライフタイムについて詳しく学び、活用方法を紹介します。
手を動かして考えればよくわかる 高効率言語 Rust
豊富なサンプルはすべて書き下ろし!
PythonからRustへの道がここにある!
多くの題材でPythonとRustのコードを併記し、違いがわかるようにしてあります。
Rustで学ぶWebAssembly
WebAssemblyとRustの基本についておさらいしたあと、
WebAssemblyを使った簡単な機能の実装、アプリのWASM化、コンテナ環境へのデプロイと難易度を上げながら、上記メリットが実感できるようなハンズオンを用意。
ライフタイムとは?
ライフタイムとは、参照が有効な期間を示します。
Rustでは、コンパイラが参照のライフタイムを自動で推測し、メモリの不正なアクセスを防ぎますが、場合によっては開発者がライフタイムを明示的に指定する必要があります。
基本的なライフタイム規則
- 参照は常に有効なオブジェクトを指していなければならない。
- 参照は所有者のライフタイムを超えてはならない。
ライフタイムの基本的な構造を以下のコードで確認してみましょう。
fn main() {
let r;
{
let x = 5;
r = &x; // 'x'のライフタイムが短いためエラー
}
// println!("{}", r); // 'r'は無効な参照を指しているためエラー
}
ポイント:
- 変数
x
のライフタイムがブロック内で終了してしまうため、r
は無効な参照を持つことになります。このような不正な参照をRustは防ぐ仕組みを持っています。
明示的なライフタイム指定
コンパイラがライフタイムを自動で推測できない場合、明示的にライフタイムを指定する必要があります。
ライフタイム注釈は、'a
という形式で指定します。
関数におけるライフタイム注釈
ライフタイム注釈は、関数の引数や戻り値に対して指定されます。
fn longest<'a>(x: &'a str, y: &'a str) -> &'a str {
if x.len() > y.len() {
x
} else {
y
}
}
fn main() {
let string1 = String::from("long string");
let string2 = String::from("short");
let result = longest(&string1, &string2);
println!("一番長い文字列は: {}", result);
}
ポイント:
longest
関数は、2つの文字列スライスを受け取り、ライフタイムが同じスライスを返します。'a
は、2つの参照x
とy
のライフタイムが同じであることを保証します。
ライフタイムの推論
Rustでは、多くの場合、ライフタイムを明示的に指定しなくてもコンパイラが推測してくれます。
しかし、複雑なケースでは、ライフタイム注釈を使って正確に指定することが求められます。
ライフタイムの適用例
構造体にライフタイムを適用
構造体内で参照を持つ場合、その参照のライフタイムを指定する必要があります。
struct ImportantExcerpt<'a> {
part: &'a str,
}
fn main() {
let novel = String::from("今日はいい天気です。");
let first_sentence = novel.split('.').next().expect("文章がありません");
let i = ImportantExcerpt { part: first_sentence };
println!("{}", i.part); // "今日はいい天気です"が表示される
}
ポイント:
- 構造体
ImportantExcerpt
には、文字列スライスの参照が格納されています。そのため、ライフタイム'a
を指定する必要があります。
実践例 関数とライフタイムを使った文字列操作
次のコードは、与えられた2つの文字列スライスのうち、長い方を返す関数です。
fn longest<'a>(x: &'a str, y: &'a str) -> &'a str {
if x.len() > y.len() {
x
} else {
y
}
}
fn main() {
let string1 = String::from("Rust Programming");
let string2 = "Language";
let result = longest(&string1, &string2);
println!("一番長い文字列は: {}", result);
}
ポイント:
longest
関数では、ライフタイム注釈を使って、返される参照が引数のライフタイムのどちらかと一致することを保証しています。
練習問題
練習問題1: 構造体にライフタイムを指定
構造体に文字列の参照を保持させ、ライフタイムを適切に管理するコードを作成してください。
struct BookExcerpt<'a> {
title: &'a str,
content: &'a str,
}
fn main() {
// ここでコードを記述
}
まとめ
今回の記事では、Rustのライフタイムについて学びました。
ライフタイムは参照の有効範囲を管理するために非常に重要で、メモリの安全性を確保するために欠かせない概念です。
ライフタイム注釈の使い方や、構造体、関数でのライフタイム指定を通して、Rustのメモリ管理についてより深く理解できたのではないでしょうか。