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C++に興味を持ち、このページに辿り着いてくれたあなた。
あなたは数年前の筆者かもしれません。
この記事は自分自身をペルソナとして構成しています。
- Pythonよりも安定した高頻度取引botを作りたい
- コンパイル言語を覚えて水耕栽培など日常の作業を自動化したい
- 3Dプリンターを買ったのでハードの設計などを含めて自分で何か作りたい
- Pythonなどのスクリプト言語はある程度覚えてきた
こんな想いの筆者自身のための記事です。
きっと同じように考えている方はたくさんいることでしょう。
C++は、パフォーマンスと柔軟性を兼ね備えたプログラミング言語です。
スクリプト言語の経験があるあなたにとって、C++は新しい挑戦となるでしょう。
この記事では、C++の基本的なルールや構成、そして最初のプログラム作成までを段階的に解説します。
趣味でプログラミングを楽しむあなたが、自動トレードBOTや水耕栽培プログラムなど、夢に描いたプロジェクトを実現する第一歩として、C++の世界へようこそ!
C++の基本的な概念
C++を学ぶ前に、基本的な概念を理解することが重要になります。
C++は、コンパイル言語であり、スクリプト言語とは違い、ソースコードは実行可能なプログラムに変換される必要があります。
このプロセスのことをコンパイルと呼びます。
C++の構文は、変数宣言から制御構造まで、プログラムの基礎を形成します。
例えば、int myNumber = 5;
は、整数型の変数myNumber
を宣言し、5で初期化しています。
コメントアウトは、// この行はコメントです
のように書きます。
これらの基本的な構成要素から始めて、徐々に複雑な概念へと進んでいきましょう。
ある程度プログラミングの基礎があれば問題ないでしょう。
C++でのプログラミングの基本ルール
プログラミング言語C++を学ぶ上で、理解すべき基本ルールがいくつかあります。
これらのルールを把握することで、エラーの少ない効率的なコードを書くことができます。
ソースファイルとヘッダーファイルの役割
C++プログラムは通常、ソースファイル(.cpp
)とヘッダーファイル(.h
)に分けて書かれます。
ソースファイルにはプログラムの主要なロジックが含まれ、ヘッダーファイルにはクラスの宣言や関数のプロトタイプが含まれます。
これにより、コードの再利用性が高まり、プロジェクトの管理が容易になるというわけです。
名前空間(namespace)の使用法
C++では、namespace
を用いてコード内の名前の衝突を避けるような仕組みをとっています。
標準ライブラリのクラスや関数はstd
名前空間に属しています。
例えば、std::cout
やstd::vector
などがそれに該当しているわけです。
using namespace std;
と宣言することで、std::
のプレフィックスなしにこれらの名前を使用できますが、大規模なプロジェクトでは名前の衝突を避けるために、この慣習を避けることが推奨されています。
メモリ管理の基礎
C++では、開発者自身がメモリ管理を行う必要があります。
これには、動的メモリ確保と解放が含まれます。
new
とdelete
演算子を使用して、メモリを確保し、不要になったメモリを解放します。
適切なメモリ管理は、メモリリークや不正なメモリアクセスを防ぐために重要です。
こういった点が高頻度取引botを安定して運用するポイントとなっているわけです。
コメントの書き方
良いコードは、適切なコメントを含むべきです。
デバッグの際などの道標となるでしょう。
コメントは、コードの意図を他の開発者に伝え、将来的なメンテナンスを容易にします。
一行コメントは//
で始まり、複数行コメントは/* コメント */
で囲みます。
簡単なプログラムを作ってみよう
やっぱりプログラミング学習といえば「Hello, World!」プログラム
プログラミング学習の伝統的な第一歩として、「Hello, World!」プログラムを書いてみましょう。
このシンプルなプログラムは、画面に「Hello, World!」というメッセージを表示します。
C++での実装は以下のようになります。
#include <iostream> int main() { std::cout << "Hello, World!" << std::endl; return 0; }
このコードは、C++の基本的な構造を把握するのに最適です。
#include <iostream>
は、入出力に関連する機能をプログラムに取り込むためのもの。
int main()
は、すべてのC++プログラムの起点であるメイン関数を定義しています。
std::cout
は、標準出力(通常は画面)にメッセージを送ります。
このプログラムをコンパイルして実行すると、画面に「Hello, World!」と表示されます。
基本的な入出力
C++での入出力は、std::cin
とstd::cout
を使用して行います。
std::cout
は出力に、std::cin
は入力に使用します。以下の例では、ユーザーからの入力を受け取り、それを画面に表示します。
#include <iostream> int main() { std::string name; std::cout << "Enter your name: "; std::cin >> name; std::cout << "Hello, " << name << "!" << std::endl; return 0; }
このプログラムでは、ユーザーが名前を入力すると、その名前を使って挨拶を行います。
std::cin >> name;
行でユーザーの入力をname
変数に格納し、std::cout
を使用して結果を出力します。
コンパイル方法のガイド
さて、スクリプト言語からコンパイル言語に移行した方にとってはコンパイルという作業がいまいちピンとこないかもしれません。
実践でやってみれば、なるほどと理解できますので、まずは手を動かして実践してみましょう。
WindowsでのC++プログラムコンパイル方法(Visual Studio使用)
ステップ 1: Visual Studioのインストール
- Visual Studioの公式サイトにアクセスし、「Community」版をダウンロードします(個人使用の場合無料)。
- ダウンローダーを実行し、インストールプロセス中に「C++を使ったデスクトップ開発」ワークロードを選択します。
- インストールが完了するまで待ちます。
ステップ 2: 新しいプロジェクトの作成
- Visual Studioを開き、「新しいプロジェクトの作成」を選択します。
- 「コンソールアプリ」を選択し、言語として「C++」を選びます。
- プロジェクト名と保存場所を設定し、「作成」をクリックします。
ステップ 3: コードの入力
- プロジェクトが作成されると、エディタに
main.cpp
ファイルが開かれます。 - 「Hello, World!」プログラム(上記参照)をこのファイルに入力します。
ステップ 4: プログラムのコンパイルと実行
- 上部のツールバーから「ローカルWindowsデバッガー」をクリックします。
- Visual Studioがプログラムをコンパイルし、実行します。出力ウィンドウに「Hello, World!」と表示されれば成功です。
MacでのC++プログラムコンパイル方法(Visual Studio Code使用)
MacではVisual Studio Code(VS Code)とコマンドラインツールを使用してC++プログラムをコンパイルします。
VS Codeは軽量で拡張性が高く、多くの言語に対応しています。
ステップ 1: 必要なソフトウェアのインストール
- Visual Studio Codeの公式サイトからVS Codeをダウンロードし、インストールします。
- Xcode Command Line Toolsをインストールします。ターミナルを開き、
xcode-select --install
を実行します。 - VS Codeで、C++のコード編集とデバッグを支援するための拡張機能(例: C/C++ for Visual Studio Code)をインストールします。
ステップ 2: 新しいプロジェクトの作成
- VS Codeを開き、「新しいファイル」を作成します。
- ファイルに「Hello, World!」プログラムを入力し、
.cpp
拡張子で保存します(例:hello.cpp
)。
ステップ 3: ターミナルを使用してプログラムをコンパイル
- VS Codeの統合ターミナルを開きます(ビュー > ターミナル)。
- 以下のコマンドを使用してプログラムをコンパイルします。
g++ -o hello hello.cpp
これにより、hello.cpp
から実行可能なファイルhello
が生成されます。
ステップ 4: プログラムの実行
ターミナルで以下のコマンドを実行します。
./hello
「Hello, World!」と表示されれば、プログラムのコンパイルと実行が成功しています。
これらのステップを踏むことで、WindowsおよびMacの両方でC++プログラムをコンパイルし、実行する方法を理解できます。C++の学習を進める上で、このプロセスの習得は非常に重要です。
プロジェクトに役立つC++の特徴
オブジェクト指向プログラミング(OOP)
C++はオブジェクト指向プログラミング(OOP)をサポートしています。
OOPは、プログラムをオブジェクトの集まりとして考える方法で、コードの再利用性、拡張性、管理のしやすさを向上させます。
C++における主要なOOPの概念には以下が含まれます。
- クラスとオブジェクト:クラスはオブジェクトの設計図であり、オブジェクトはそのクラスのインスタンスです。クラスにはデータ(属性)とそのデータを操作するための関数(メソッド)が含まれます。
- 継承:あるクラス(子クラス)が別のクラス(親クラス)の属性やメソッドを引き継ぐことができます。これにより、共通の機能を再利用し、コードの重複を避けることができます。
- ポリモーフィズム:異なるクラスのオブジェクトが、同じインターフェースまたはメソッドを通じてアクセスされる能力です。これにより、異なる型のオブジェクトを一様に扱うことができます。
関数の使用方法
C++では、関数を使ってコードをモジュール化し、特定のタスクを実行するコードブロックを定義します。
関数には以下の特徴があります。
- 関数の定義と呼び出し:関数は、特定の操作を行うためのコードをカプセル化します。関数を定義することで、必要な場所で何度でもその関数を呼び出すことができます。
- 引数と戻り値:関数は引数を取ることができ、計算や操作の結果を戻り値として返します。これにより、関数の再利用性が高まります。
- オーバーロード:同じ関数名でも異なる引数を持つ関数を定義することが可能です。これを関数のオーバーロードといい、用途に応じて最も適した関数が呼び出されます。
C++の追加の基本ルール
変数のスコープと寿命
- ローカル変数:関数内で宣言された変数で、関数が実行されている間のみ存在します。
- グローバル変数:関数の外で宣言され、プログラム全体でアクセス可能ですが、乱用するとプログラムの理解とメンテナンスが難しくなります。
- 静的変数:
static
キーワードを使用して宣言され、プログラムの実行が終了するまでその値が維持されます。ローカル変数として静的に宣言することで、その関数が終了しても値が保持されます。
データ型と型変換
- 基本データ型:
int
(整数)、float
(浮動小数点数)、double
(倍精度浮動小数点数)、char
(文字)などがあります。 - 型変換:異なるデータ型間での変換が必要な場合があります。明示的に型を変換するには、キャスト演算子(例:
static_cast<double>(intVariable)
)を使用します。
演算子のオーバーロード
- C++では、既存の演算子に対して新しい意味を定義することができます。これにより、クラスのインスタンス間で演算子を使用した操作が可能になります(例:クラス型のオブジェクト同士の加算)。
テンプレート
- 関数テンプレートとクラステンプレートがあります。テンプレートを使用することで、異なるデータ型に対応する関数やクラスを一つの定義で扱うことができます。これにより、コードの再利用性が高まります。
エラー処理
- 例外処理:
try
、catch
、throw
キーワードを使用して、プログラムの実行中にエラーが発生した場合の処理を行います。例外処理を適切に使用することで、エラーに対処し、プログラムの安定性と信頼性を高めることができます。
コンパイラ指示
- プリプロセッサ指令:
#include
や#define
など、コンパイル前に処理される指示です。ファイルのインクルードやマクロの定義に使用されます。
これらの追加の基本ルールを理解し、適用することで、C++のプログラミングスキルをより深く、幅広く展開することができます。基本的な概念から始めて徐々に応用へと進むことで、C++の機能を最大限に活用し、より複雑なプロジェクトに挑戦することが可能になります。
水耕栽培プログラムを構成するために
ここからは具体的に水耕栽培プログラムなどを実装するために必要な情報をアーカイブしていきます。
まず、こういったハードと一緒に動かす場合は、スイッチサイエンスさんなどから対応するセンサーなどを購入する必要があります。
例えば、温度センサーや湿度センサー、ジャイロなどです。
ほとんどの場合はm5stackか、Raspberry Piなどのマイコンで実装できます。
センサーデータの読み取りと処理をするためのコードを書いていき、ハードと連携しながら動かしていくわけです。
C++を使用してセンサーデータを読み取り、処理するには、センサーとのインターフェース方法を理解する必要があります。多くのセンサーはシリアル通信(通常はUSBまたはUART経由)を使用してデータを送信します。このセクションでは、C++でシリアルポート経由でセンサーデータを読み取り、条件分岐を使ってデータに基づく簡単な意思決定を行う方法について説明します。
シリアル通信を介したデータの読み取り
シリアル通信には、C++で直接扱うことが可能なBoost.Asio
ライブラリなどの外部ライブラリを使用します。ここでは、Boost.Asio
を使用したシリアル通信の基本的な手順を紹介します。
Boost.Asioのセットアップ
- Boostライブラリのインストール:
Boost.Asio
はBoostライブラリの一部です。Boost公式サイトからダウンロードして、指示に従ってインストールします。 - プログラムにBoostを含める: インストール後、プログラムでBoostを使用するためには、適切なインクルードパスとリンクパスを設定する必要があります。
シリアルポート経由でのデータ読み取り
以下は、Boost.Asio
を使用してシリアルポートからデータを読み取る基本的なコード例です。
#include <boost/asio.hpp> #include <iostream> using namespace boost::asio; int main() { io_service io; serial_port serial(io, "/dev/ttyUSB0"); // デバイス名は環境によって異なります serial.set_option(serial_port_base::baud_rate(9600)); // データ読み取り用のバッファ char buf[512]; boost::system::error_code error; // データの読み取り size_t len = serial.read_some(buffer(buf), error); if (error) { std::cerr << "読み取りエラー: " << error.message() << std::endl; } else { std::cout.write(buf, len); } return 0; }
このコードは、指定されたシリアルポート(この例では/dev/ttyUSB0
)からデータを読み取り、読み取ったデータをコンソールに出力します。
条件分岐を使用したデータ処理
センサーデータを読み取った後、そのデータに基づいて特定のアクションを実行するためには、条件分岐を使用します。例えば、温度センサーからの読み取り値に基づいて、特定の温度範囲外であれば警告メッセージを表示する、といった処理が可能です。
// 仮のセンサーデータ読み取り値 int temperature = 30; // 30度とします // 温度に基づく条件分岐 if (temperature > 25) { std::cout << "警告: 温度が高すぎます!" << std::endl; } else if (temperature < 5) { std::cout << "警告: 温度が低すぎます!" << std::endl; } else { std::cout << "温度は正常範囲内です。" << std::endl; }
この例では、temperature
変数の値に応じて異なるメッセージを出力しています。実際のプログラムでは、この変数にシリアルポートから読み取った実際のデータを格納します。
注意点
- シリアルポートのデバイス名(この例では
/dev/ttyUSB0
)は、使用しているシステムや接続されているデバイスによって異なります。 - 実際にセンサーからデータを読み取る場合、データの形式(バイナリ、テキスト等)を理解し、適切に処理する必要があります。
- シリアル通信の設定(ボーレート、パリティ、ストップビットなど)は、使用しているセンサーの仕様に合わせて適切に設定してください。
C++でセンサーデータを効果的に読み取り、処理するには、シリアル通信の基本を理解し、受け取ったデータを適切に解析する能力が必要です。上記の基本をマスターすることで、さまざまなセンサーベースのプロジェクトに取り組むことが可能になります。
自動トレードBOTに関連するC++の基本情報
トレードbotに関してはどこかのサーバーにデプロイして使う形になります。
もちろん、m5stackか、Raspberry Piなどのハードにデプロイしてネットワーク通信を経由して動かすこともできますが、こういう分野の場合は思わぬwifi、その他通信のトラブルで大きな事故に繋がらないように最新の注意が必要です。
- APIの利用:外部API(例:株価情報、通貨レート)にアクセスし、データを取得。C++でHTTPリクエストを送信し、レスポンスデータを処理するコードを開発します。
C++で外部APIにアクセスし、使用することで、リアルタイムの株価情報や通貨レートなどをプログラムに取り込み、それを基にした処理を行うことができます。
ここでは、一般的なHTTPリクエストを送信してAPIからデータを取得する基本的な流れを紹介します。
必要なライブラリ
C++でHTTPリクエストを扱うためには、外部ライブラリを使用する必要があります。
一般的には、libcurl
(CURLライブラリ)が使用されます。libcurl
は多機能で安定しており、多くのプロトコルをサポートしています。
libcurlのインストール
- Windows: libcurlの公式サイトからダウンロードし、指示に従ってインストールします。
- Linux: コマンドラインを使用して
sudo apt-get install libcurl4-openssl-dev
(Ubuntuの場合)を実行します。 - Mac: Homebrewを使用して
brew install curl
を実行します。
サンプルコード
以下は、libcurl
を使用してHTTP GETリクエストを送信し、APIからJSON形式のデータを取得する簡単な例です。
データ分析と意思決定
- データ処理:取得した市場データを分析し、トレードの意思決定を自動化するためのアルゴリズムの基本を解説します。C++での配列やベクターを使用したデータの格納と、基本的な統計計算方法を紹介します。
#include <iostream> #include <curl/curl.h> #include <string> // 書き込みコールバック関数 static size_t WriteCallback(void *contents, size_t size, size_t nmemb, std::string *userp) { userp->append((char*)contents, size * nmemb); return size * nmemb; } // APIからデータを取得する関数 std::string GetDataFromAPI(const std::string& url) { CURL *curl; CURLcode res; std::string readBuffer; curl = curl_easy_init(); if(curl) { curl_easy_setopt(curl, CURLOPT_URL, url.c_str()); curl_easy_setopt(curl, CURLOPT_WRITEFUNCTION, WriteCallback); curl_easy_setopt(curl, CURLOPT_WRITEDATA, &readBuffer); res = curl_easy_perform(curl); curl_easy_cleanup(curl); if(res != CURLE_OK) std::cerr << "curl_easy_perform() failed: " << curl_easy_strerror(res) << std::endl; } return readBuffer; } int main() { std::string url = "http://api.example.com/data"; // APIのURL std::string data = GetDataFromAPI(url); std::cout << "Received data: " << data << std::endl; return 0; }
このコードは、指定されたURLからデータを取得し、その内容をコンソールに出力します。
GetDataFromAPI
関数内でcurl_easy_init
を呼び出してCURLを初期化し、curl_easy_setopt
でオプションを設定した後、curl_easy_perform
でリクエストを実行しています。
データはreadBuffer
に格納され、関数の戻り値として返されます。
実際に特定のAPIを利用する場合は、そのAPIのドキュメントを参照し、必要な認証やリクエストの形式に合わせてコードを調整する必要があります。また、APIを使用する際には、利用規約を確認し、適切に使用してください。
両トピックに共通する要素
マルチスレッディング
C++でのマルチスレッディングは、複数のタスクを並行して実行するための強力な手段です。C++11以降、標準ライブラリには<thread>
ヘッダが導入され、スレッドを使ったプログラミングがよりアクセスしやすくなりました。ここでは、マルチスレッディングの基本、使用方法、および同期メカニズムについて詳しく解説します。
マルチスレッディングの基本
マルチスレッディングとは、プログラムを複数の実行パス(スレッド)に分割し、それぞれを同時に実行する技術です。各スレッドはプログラム内で独立した実行フローを持ちますが、同じメモリ空間を共有するため、通信とデータ共有が可能です。
スレッドの作成と実行
C++では、std::thread
クラスを使用して新しいスレッドを作成します。スレッドを起動するには、std::thread
オブジェクトを生成し、そのコンストラクタにスレッドで実行したい関数を渡します。
#include <iostream> #include <thread> // スレッドで実行される関数 void threadFunction() { std::cout << "Hello from thread!" << std::endl; } int main() { std::thread t(threadFunction); // スレッドの作成と実行 // メインスレッドでの作業 std::cout << "Hello from main thread!" << std::endl; t.join(); // tスレッドが終了するのを待つ return 0; }
スレッドの同期
複数のスレッドが同じデータにアクセスすると、データ競合や非決定的な結果を招く可能性があります。これを防ぐために、スレッド間の同期が必要になります。
- ミューテックス:
std::mutex
は、一度に1つのスレッドのみが特定のセクションにアクセスできるようにします。lock()
とunlock()
メソッド、またはstd::lock_guard
を使用して保護されたセクションを作成します。
#include <iostream> #include <thread> #include <mutex> std::mutex mtx; // ミューテックスの宣言 void printBlock(int n, char c) { std::lock_guard<std::mutex> lock(mtx); // ロックガードによる自動ロックとアンロック for (int i = 0; i < n; ++i) { std::cout << c; } std::cout << '\n'; } int main() { std::thread t1(printBlock, 50, '*'); std::thread t2(printBlock, 50, '$'); t1.join(); t2.join(); return 0; }
条件変数:std::condition_variable
は、特定の条件が満たされるまでスレッドの実行を停止し、条件が満たされたときにスレッドを再開します。
#include <iostream> #include <thread> #include <mutex> #include <condition_variable> std::mutex mtx; std::condition_variable cv; bool ready = false; // 待機するスレッドの関数 void printId(int id) { std::unique_lock<std::mutex> lck(mtx); while (!ready) cv.wait(lck); std::cout << "Thread " << id << '\n'; } // readyをtrueに設定し、すべてのスレッドを起動する関数 void go() { std::unique_lock<std::mutex> lck(mtx); ready = true; cv.notify_all(); // すべてのスレッドに通知 } int main() { std::thread threads[10]; for (int i = 0; i < 10; ++i) threads[i] = std::thread(printId, i); std::cout << "10 threads ready to race...\n"; go(); // スレッドの実行を開始 for (auto& th : threads) th.join(); return 0; }
注意点
- スレッド間でデータを共有する場合は、競合状態やデッドロックに注意する必要があります。
- 不要な共有データのアクセスを最小限に抑え、可能な限りメッセージパッシングやロックフリーのアルゴリズムを使用することが推奨されます。
マルチスレッディングは、プログラムの性能を向上させるための強力なツールですが、正確な使用方法を理解し、注意深く扱う必要があります。